アイザック・アシモフのSF:極近未来の陽電子ロボットをテーマとするシリーズ

「極近未来」ってどのくらい近いかというと、お話は、今となっては「現代」になった時代から始まります。シリーズ第1作の短編集「I, Robot」は、陽電子ロボット工学の創始者であり、この分野の研究に生涯を懸けたスーザン・キャルビン博士とのインタビューの記録という形をとっています。

博士は(たしか)1982年に米国に生まれ、20代後半で創業間もないUSロボット社に就職、ここで陽電子ロボットを苦労の末完成させます。やがて陽電子ロボット工学は確立した分野となり、博士も引退の時を迎えます。「I, Robot」は、この間の過程を時間順にまとめたオムニバス作品集です。

アシモフの有名なロボットの3原則
第1条:ロボットは人を傷つけてはならない
    また人への危険を看過してはならない
第2条:ロボットは第1条に反しない限り人間の命令に従わなければならない

第3条:ロボットは第1条、第2条に反しない限り自分の身を守らなければならない
も、この短編集の中で生まれました。

この短編集の中で、他のシリーズとの関係という観点で特に興味深いのは、「Liar(うそつき)」という作品です。たまたま出来てしまった人の心を読めるロボットが、スーザンの心を傷つけまいとして(ロボットの3原則:第1条への服従)嘘をつきつづけ、結果的にはスーザンの心をずたずたにしてしまう、という内容で、題名は、最後にロボットに投げかける”Liar !(嘘つき!)”という叫びからつけられています。

「The Rest of The Robots」は、スーザン亡き後のUSロボット社とロボットを主人公にした短編集です。進歩したロボット達の存在は、人々に「ロボットはいつまでも人間に従順でいるのだろうか?」という理由のない不安感を与えます。やがてロボットの製造・販売に規制が加えられるようになり、最後には、研究目的を除き人間型ロボットの製造は禁止されます。

こうして、地球社会は人間型のロボットを恐れ、忌み嫌う社会になっていくのです。

ロボットの歴史については、この2冊で殆ど語り尽くされています。「Insert Knob A in Hole B」と「Light Verse」の2編は、陽電子ロボットが登場するのでタイトルを上げましたが、ロボットの歴史という観点からは特に重要な作品ではありません。

The Bicentennial Man」は人間になったロボットの話。最近「アンドリュー」というタイトルで映画化されました。何となく、他のシリーズで重要なファクターとなるR.ダニール・オリバーを連想させるキャラクターでもあります。

最後に、「陽電子ロボット」の「陽電子」とは+電荷を持った電子のことですが、これがどういう風にロボットの回路と関係があるかというと、アシモフ自身、あまり深い考えはなかったそうです。執筆開始当時「陽電子」が発見されたので「これはオモシロイ」ということで、こんなネーミングにしただけとのこと。

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