1981年7月号(275号)

ハヤカワSFマガジン275号表紙
(C) 早川書房
今月号は作品も、その他の話題も充実しています。

まず掲載作品から紹介すると、恒例の「ヒューゴー/ネビュラ賞特集」ということで、前年(1980年)の受賞作、および候補作が4作品掲載されています。

ちなみにノヴェル(長編)部門は、両賞ともクラークの「楽園の泉」で、これは前年にSFマガジンで連載済みなので、1980年の受賞作の大半が、SFマガジン誌上で紹介されたことになります。

掲載作品の中では、ジョージ・R・R・マーチンの2作品がお気に入りです。この人の作品の魅力は、冒頭どこか普通でないシチュエーションで読者を捕らえ、非日常的な美しいイメージで話に引き込むところでしょうか。

例えば、「龍と十字架の道」は、キリスト教の異端狩り担当牧師が、龍そっくりな姿をした異星人の司祭から、新たな異端の芽を狩り取るように指示される場面から始まります。

彼は異端の星に赴き、任務を成功させるのですが、異端であるとされた、悔い改めたユダを主人公とする美しいホラ話と、どう考えてもアダムとイブの末裔ではありえない異形の宇宙人にキリスト教の高位を与える現実を比べ、果たしてどちらが、より異端なのか、疑問を覚えずにはいられません。

「サンドキングス」のほうは、道楽で異星の虫を飼育する男の話。どちらも早川文庫SFの短編集に載っていますので、ぜひ一読あれ!

このほか、「無伴奏ソナタ」もいいです。カード作品の場合は、出だしは、ややとっつきににくい面があるのですが、しばらくガマンして読むと、登場人物への共感が生まれ、楽しく読み進めることができます。読後に何かが残ります。

長編だと、「エンダーの世界」「死者の代弁者」あたりが「無伴奏ソナタ」に近い雰囲気で、主人公の内面の成長と葛藤がテーマです。もうちょっと気楽に読みたいのであれば「帰郷を待つ星」5部作(早川文庫SFで第2作まで出版済み)「反逆の星」(これも早川文庫SF)あたりがおすすめです。

特集作品のうち「ジャイ-アント」だけは、なぜ受賞したのか不思議です。タイトルの通り巨大アリをテーマにした作品。「宇宙線X」(謎の宇宙線によってアリが馬並のサイズに巨大化し人を襲う”SF”映画)をもじって作られたとのことです。そういう由来を聞くと「なるほど巨大アリを”まっとうな”SFに仕立てるとこういう作品になるのか、ふむふむ」とうなずくことはできますが・・・それだけの作品という感想です。

特集以外の海外作品は「始まりの前に戻ろう」というショートショート1本のみ。男の子と女の子が、バスに乗って「まだ名前が存在しないはるか彼方の土地」に行くお話。現代のおとぎ話といった風味の小品です。

************************************

サイエンス・トピックによれば、この年の4月、日本時間で12日午後9時、世界初のスペースシャトル「コロンビア号」が打ち上げられました。耐熱タイルがはがれるという事故が起きたものの無事に打ち上げ成功。

冷戦時代のことですから、軍事目的が優先であるものの、「早ければ十数年後には観光目的の打ち上げが実現する予定」とあります。お値段は、一人当たり1千万円〜1億円と予測されております。時期は少しはずれたものの、大体当たりの予測ですね。

************************************

第二回吉川英治文学新人賞を栗本薫さんが受賞。第一回は田中光二さんですし、栗本薫さんは芥川賞も受賞していますから、このころ、ようやくSF作家が文学賞の対象になる時代に入ったようです。

************************************

最後に、もう一つおもしろかったのは、主婦の友社の広告記事「7つの謎と奇跡」です。「7つ」の中身は、南仏ルールドの奇跡、古代マヤとムー大陸の関連、ネス湖の怪獣、ブラジルの超能力者による奇跡の手術、ツングース謎の爆発、ファティマの太陽円盤、UFOといった次第。この手のネタって、ウソだとばれないかぎり永遠に不滅なんですね〜


全掲載内容
コンテンツ
作者
ページ
表紙イラストレーション 加藤直之
表紙
広告 三和銀行の小説広告 透明人間の失敗。
-
表紙内側
内表紙
-
1
1
目次
-
2
3
(連載第8回)科学冒険時代
 海野十三
會津信吾
4
9
(連載第20回)野田昌宏のセンス・オブ・ワンダーランド
 満を持し遂に上がった<コロンビア>
野田昌宏 画:加藤直之
10
13
(連載第34回)スタジオぬえのスターシップ・ライブラリイ

文:永瀬唯 絵:宮武一貫

14
15
DIMENSION O ディナー イラスト:霜月象一
16
16
-調査船報告- 遠い夕日<前篇>
光瀬龍 画:金森達
17
31
’80ヒューゴー/ネビュラ賞特集 解説
安田均
32
37
ヒューゴー賞ショート・ストーリイ部門受賞作
龍と十字架の道[The Way of Cross and Dragon]
ジョージ・R・R・マーティン
  訳:風見潤 画:岩淵慶造
38
54
広告 主婦の友社 7つの謎と奇跡
 南仏ルールドの奇跡
 古代マヤ人はムー大陸人の後裔
 ネス湖の怪獣
 ブラジル超能力者の奇跡の手術
 ツングースの謎
 ファティマの太陽円盤
 月は異星人の宇宙基地
-
55
55
もうひとつのルール
森下一仁 画:新井苑子
56
71
ネビュラ賞ショート・ストーリイ部門受賞作
ジャイ-アント[giANTS]
エドワード・ブライアント
  訳:大野万紀 画:佐治嘉隆
72
87
ショート・ショート・コーナー 始まりの前に戻ろう レイリン・ムーア
  訳:森下弓子 画:横山宏
88
91
お知らせ 第二回吉川英治文学新人賞贈呈式
 受賞作:「舷の聖域」栗本薫
-
92
92
広告 難波弘之 書き下ろしSFショート・ショート集
-
93
93
ヒューゴー/ネビュラ賞ショート・ストーリイ部門候補作
無伴奏ソナタ[Unaccompanied Sonata]
オーソン・スコット・カード
  訳:冬川亘 画:野中昇
94
111
世界SF情報
 ヒューゴー賞ノミネーション発表
 (ノヴェル「バレンタイン卿の城」シルヴァーバーグ、
  ドラマ:「コスモス」カール・セーガン 他)
 その他のニュース
  ニューウェーブ最後の牙城「サヴォイ・ブックス」倒産
島田武
112
112
(連載)トワイライト・ワールズ
 誕生(5)
天野嘉孝
113
119
AWARD A LA CARTE (6)
 ヒューゴー/ネビュラ以外の賞の特集で
 このコラムも大団円なのだ!
安田均
120
120
(連載コミック)銀の三角
 第二部(二)安定指数セクション
萩尾望都
121
136
DONTACON I レポート (Y)
137
137
<外惑星野郎ども・第10回>釦と留め金
今日泊亜蘭 画:金森達
138
147
お知らせ SFマガジンバックナンバー
-
148
148
広告 1981アガサ・クリスティー・フェア
 6月15日〜8月15日 全国4000書店で開催
-
149
149
時を正す者 火浦功 画:畑農照雄
150
165
瞑想昇天 岬兄悟 画:南陽子
166
177
Sci-Fi Set 第3回 十人十色 難波弘之
178
181
SF SCANNER
 女流ファンタジイの旗手、タニス・リー
泉本和
182
185
サイエンス・トピック
 <コロンビア>が開く新時代
池見照二 画:島津義晴
186
187
てれぽーと
-
188
191
SFレビュウ 高橋良平 他
192
197
今月のブックガイド 星敬
198
199
第7回「ハヤカワ・SFコンテスト」
 第1次選考通過作品発表
 応募:487篇、第1次選考通過:51篇
-
200
200
広告 早川書房の出版本
-
201
208
リーダーズ・ストーリー  講評
-
209
209
リーダーズ・ストーリー  タイム・トラベル 小沢敏彦
210
211

石原博士のSF研究室(5)
 宇宙船は伸びるのです!

石原藤夫 画:宮武一貴

212
217
ヒューゴー/ネビュラ賞ノヴ ”サンドキングス”[Sandkings] ジョージ・R・R・マーティン
  訳:安田均 画:横山宏
218
252
(連載第5回)SFエンサイクロペディア
 [B]ベーコン、フランシス
  〜[B]バーナード、レイフ
編:ピーター・ニコルズ
 監修:浅倉久志、伊藤典夫
 訳:黒丸尚
253
271
編集後記
-
272
272
広告 国書刊行会 ラテンアメリカ文学叢書 他
-
表紙内側
広告 浅田飴
-
裏表紙
凡例 :小説   :書評、SF関連の話題等   :投稿小説
   
:コミック :SF周辺の話題(アート、音楽、映画等)
   
:投稿   :早川書房からのおしらせ等
   
:広告