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不思議なことに、この予言集を書き継ぐものが代々あらわれ、それぞれが50年分の予言を書き足していきますが、それも最終戦争で終わる、というお話です。 まだソ連が健在で、東西冷戦まっただなかの1970年代。このころには最終戦争が間近のものだという感覚が確かにありました。国内社会を見ても、学生運動の残り火が消えず、野党は常に反政府がスローガンで、労働組合も政治的な運動に執念を燃やしていた、闘いの時代だったような気がします。 「自分の理想を追求して、違う思想と闘う」時代だったのではないでしょうか。理想を究極まで追求しようとしたら、思想の相違を棚上げにした妥協だの、労使協調だの。そんなことができるはずがない。闘って滅びるか、相違を超克する新たな思想を見出すしかない。そんな気がします。 いずれにしても、冷戦の時代を象徴するかのように、他の掲載作品もシリアスで暗いものが多いです。 「ニュー・アトランティス」は近未来のアメリカ社会が背景。この時代、テクノロジーは現代より進んでいるのですが、エネルギーは不足し、国家はエネルギー供給を独占することで強力な支配力を保ち、「福祉」の名の下に人権は抑圧されています。対外的には、終わることのない戦争が続いています。 社会制度を批判するものは、その間違った精神を救うために矯正キャンプに送られ、『正しい生活』に戻るように指導されます。 (以上、2002年2月頃記録 以下、2005.1.8追記) こうした重苦しいアメリカ社会が、主人公の女性の目から淡々と描かれています。大きな事件も起きず、悲劇的な結末を迎えるのでもなく、ましてハッピーエンドでもない、数学者である夫が「レクリエーション・キャンプ」から解放されてから、精神を治癒するために病院に送致されるまでの12日間の生活を描いた作品です。 以上のように、一見してアンハッピーエンドでも、結末には、未来に対する微妙な希望が残されています。ル=グィンの別の作品を読んだ時にも、同じような感想を抱いたことがあります。この人は、遠未来や別世界を舞台にしている時でも、結局、現代アメリカ社会に目を向けているのではないか?「ニュー・アトランティス」も(この作品が執筆された)1970年代のアメリカ社会への批判ではないか?彼女の作品をさほど読み込んでいないので、勘違いかもしれませんが、そんな気がしました。 (以上、2005.1.8追記) 「カメガルー・コート」は、世間と違う意見を述べた人をみんなで徹底的にいじめる(公式には『討論する』)未来のTV番組「カメガルー・コート」の犠牲者となった男の話。 彼はある夜酒場で「核兵器はなぜいけないのか。理論的に考えてみよう。」としゃべったために、カメガルー・コートに「核兵器賛成論者」として密告されます。そして勤め先を追われ、家庭は崩壊し、番組にむりやり出演させられる過程で、この番組の裏側のさらに醜い部分を知ります。 こんな作品ばかり並べると、暗い社会のイメージがしますが、「てれぽーと」を見ると、読者からのお便りに、投稿者の住所が載せられています。ストーカーなんていう言葉もなく、全国雑誌に住所を公開することが不思議ではなかったんです。そういえば「愉快犯」なんて言葉もない(そんなヒマな人がいない)、そういう点では幸せな時代でした。 (以上、2002年2月頃記録 以下、2005.1.8追記) 最後に、他の海外作品を簡単に紹介します。 「はぐれトマト」は、突然惑星サイズのトマトに変身した男の物語。「変身」のパロディ作品。(私の理解力不足なのかもしれませんが)カフカの作品と違って、形而上学的な要素は全くありません。ただの冗談小説です。主人公の名前が「フィリップ・K」というのも笑える。本人の許可を取ったのだろうか? 「太陽系辺境空域」は、ニーヴンの「ノウンスペース・シリーズ」の1作。主人公たちが、太陽系辺境空域で続発する宇宙船消失の謎を解き明かす冒険推理小説です。この作品が発表された当時はアッという結末だったのでしょうが、今では半分も読めば原因が分かるかも・・・時代は変わった。 (以上、2005.1.8追記) |
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