1977年8月号(225号)

ハヤカワSFマガジン225号表紙
(C) 早川書房
今月号は、この年の2月に亡くなったエドモンド・ハミルトンの追悼特集が組まれています。お得意のスペース・オペラだけではなく、少しバラエティを持たせた4作品による特集です。

1作品目は「蛇の女王」。古代シュメールの伝説の蛇の女王を復活させてしまう話で、SFというよりラヴクラフトの雰囲気に近いです。

2つ目の「マムルスの邪神」も恐怖小説ないしは一昔前の冒険小説風です。内容は、アフリカの砂漠で古代マムルスの神殿を見つけた考古学者が、見えない巨大グモの邪神に襲われる話。その後、砂漠をさまよっていた考古学者が偶然、旅人に発見され、恐怖体験を語った後で息絶えるという、この手の話の伝統的なスタイルを踏襲しています。

3作品目の「衛星チタンの<歌い鳥>」は、ハミルトンの売り物「キャプテン・フューチャー・シリーズ」の作品です。今回はサイモン(生きている脳(大科学者))が生体手術を受け、人間の姿で登場、ロボットのグラッグ、アンドロイドのオットーとともに冒険を繰り広げます。

最後の「審判の後に」は、正統派のSFショート・ストーリーです。放射能によって突然変異を起こした細菌により人類が滅亡、地球を周遊する宇宙ステーションで生き延びた科学者が、18体のサイボーグに文化遺産(音楽、記録・・)を詰め込み宇宙の彼方に放ちます。サイボーグが文明を持った宇宙人と出会い、人類が存在していたという証が引き継がれることを祈りつつ。そしてもう1人の乗員と共に細菌で汚染された故郷、地球に死に場所を求めて帰還します。

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今月号は、ハミルトン以外にも、普通のSFっぽい作品が目立ちます。

「消えた少女」は、昔のTV番組「TheTwilight Zone(邦題:ミステリー・ゾーン)」の第一話の原作。突然『4次元』の割れ目に落ちた娘の救出談。 どういうわけか愛犬だけは入口を知り、助けに入り、それを追いかけた父親が救出に成功。動物の不思議な力と4次元を組み合わせた、よくある話ですね。

「良き隣人」はちょっと洒落た作品です。宇宙人の子供用のペット(直径6kmの太った鳥)が宇宙船を逃げ出し、合衆国を横断し、マンハッタンで打ち落とされます(なんだか2001年9月のテロを思い出しますね)。その数日後、TVで英語を勉強したという宇宙人からの謝罪の手紙と、賠償金として偽造5$紙幣が届けられたという話。なんせTVで得た知識しかないので、$の価値も、お札を勝手に印刷してはいけないことも、ましてや札に一連番号が印刷してあることも知らず、地球人が一番大切にしているらしいものを贈ったという次第です。

ちなみに作者のエドガー・バングボーンには、「オブザーバーの鏡」という、昔、創元推理文庫に納められていた長編があります。本格的にSFを読み始めた高校時代に読んだきりで、残念ながらストーリーを思い出せませんが、宇宙人が地球人に紛れ込んで、誤った行動をしないように監視しているという話だったような気がします。面白かったという思い出だけが残っています。

(以上、2002年2月頃記録 以下、2005.1.22追記)

最後に「インキーに詫びる」は、むりやりにジャンルを分ければタイム・トラベルものの1種ですが、SFよりも通常小説に近い作品です。主人公はニューヨークに暮らす有名な前衛音楽家。子供も大学生になり、過去を懐かしむ中年男です。音楽家として世間の評価を受け、特に生活にも不自由していないのですが、自分が作曲しているものは奇をてらったまがい物に過ぎず、かつて体に感じていた「音楽」をいつしか失ってしまった、と感じています。

そしてある日、失ったものを取り戻すために、かつて恋心を抱いた幼なじみが今でも住んでいる生まれ故郷への旅に出ます。物語は、故郷から3マイルほど離れた場所でバスを降り、徒歩で故郷を目指す前半と、昔なじみの店での幼なじみとの会合の2つの場面に分かれています。前半(分量的には7割近くを占めます)は主人公の独白や心理描写が延々と続き、非常に読みずらいのですが、実はこの部分に多数の伏線が敷かれており、後半部で全てが解決します。

タイム・トラベルものの1種と書いた理由は、主に後半部で、主人公の人生に大きな影響を与えた1931年と1946年のできごとが交差するからです。読み終わってみると、心がほんわかと温まる良い作品です。

(以上、2005.1.22追記)

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最後に「SFスキャナー」の冒頭で、「あのジェイムズ・ティプトリー・Jrが実は女性だった」という記事あり。それまでは女性だなんて思っている人はいなかったので、SF界に大きな衝撃を与えました。


全掲載内容
コンテンツ
作者
ページ
表紙イラストレーション 加藤直之
表紙
広告 三和銀行の小説広告 地球偵察シリーズ(8)
地球人ノ特別報酬ハ計画的ニ使ワレテイマス。
-
表紙内側
内表紙
-
1
1
目次
-
2
3
(連載)私をSFに狂わせた画描きたち
 ジェイムスン教授の肖像(その2)
野田昌宏 カット:加藤直之
4
11
(連載第47回)日本SFこてん古典
 「科学童話」という名のハチャメチャ
横田順彌
12
16
(連載第19回)消滅の光臨 眉村卓 画:佐治嘉隆
17
31
レポート COSMICON'77 宇宙塵20周年を祝う会 日野二郎
32
36
ハミルトン追悼特集解説 鏡明 画:中島靖侃
37
41
ハミルトン追悼特集寄稿 夫を偲ぶ リイ・ブラケット
 訳:野田昌宏 画:真鍋博
42
46
広告 講談社SF小説傑作選
 鬼才・半村良の世界(邪神世界、妖星伝、魔女街、幻視街)、
 ポトラッチ戦史(かんべむさし)、
 幻魚の島(田中光二)、
 日本SF・原点への招待「宇宙塵傑作選」全3巻
-
47
47
ハミルトン追悼特集
 蛇の女王[Surpent Princess]
エドモンド・ハミルトン
 訳:野村芳夫 画:中村銀子
48
68
ハミルトン追悼特集
 マムルスの邪神[The Monster God of Mamurth]
エドモンド・ハミルトン
 訳:谷口高夫 画:浅賀行雄
69
80
ハミルトン追悼特集
 衛星チタンの<歌い鳥>[Harpers of Titan]
エドモンド・ハミルトン
 訳:野田昌宏 画:加藤直之
81
103
ハミルトン追悼特集
 審判の後に[After Judgement Day]
エドモンド・ハミルトン
 訳:風見潤 画:岩淵慶造
104
112
(連載第2回)ワンダーランドへようこそ
 放浪者シルバーサーファー
鎌田三平
113
119
SFでてくたあ 設水研、柴野拓美
120
121
SF スキャナー
 ゼラズニイはやっぱり大物なのだ
大野万紀
122
125
(連載第13回)星座の歳時記
 白鳥座とラジオ座の正体
日下実男 カット:佐治嘉隆
126
128
ハミルトン夫妻へのインタビュー デイヴィッド・トルーズデイル、
トール・マッガイア
 訳:浅倉久志 画:スタジオぬえ
129
149
サイエンス・トピック
 日本も静止衛星時代へ
池見照二 画:島津義晴
150
151
消えた少女[Little Girl Lost] リチャード・マシスン
 訳:伊藤典夫 画:佐治嘉隆
152
160
(連載第47回)日本SFこてん古典
 「科学童話」という名のハチャメチャ
横田順彌
161
166
インキーに詫びる[Apology to Inky] ロバート・M・グリーンJr
 訳:村上博基 画:金森達
167
192
広告 早川書房の出版本
-
193
200
インキーに詫びる[Apology to Inky] ロバート・M・グリーンJr
 訳:村上博基 画:金森達
201
203
てれぽーと
-
204
206
広告 ハヤカワSFフェア
 全国3000店にて開催 1977年7月10日〜8月31日まで
-
207
207
良き隣人[Good Neighbers] エドガー・バングボーン
 訳:伊藤典夫 画:畑農照雄
208
212
世界SF情報
 ’76年度ネビュラ賞発表さる
 (ノヴェル部門:「マン・プラス」フレデリック・ポール 他)
 ウィリアムスン著作に専念
 映画「惑星ソラリス」の上映予定
 アメリカで共産圏SFの翻訳盛ん
(D・F)、(J・I)
213
213
カメガルー・コート(前篇) かんべむさし 画:楢喜八
214
231
編集後記
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232
232
広告 (連写一眼)キャノンAE−1
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表紙内側
広告 マルゼンタイプライター
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裏表紙
凡例 :小説   :書評、SF関連の話題等   :投稿小説
   
:コミック :SF周辺の話題(アート、音楽、映画等)
   
:投稿   :早川書房からのおしらせ等
   
:広告