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そんなわけでレビューの下準備はできているのに、なかなか筆が進まない週末が続きました。このまま放置しておくと、また数ヶ月のブランクが開きそうなので、作品紹介はさくっとすませ、雑文でお茶を濁すことに致しましょう。 ***************************** 先月に続きヒューゴー・ネビュラ賞特集が組まれており、ノミネートされた2作品が掲載されていす。 その1つは「帝国よりも大きくゆるやかに(アーシュラ・K・ル・グィン)」。ハイニッシュ・ユニバース・シリーズの一作です。 様々な惑星から選ばれた10人の科学者達からなる惑星探検隊が、長い飛行の末に目的の惑星に到着。そこは大陸中に森が広がる世界でした。惑星に向かう途中、自分に向けられた感情を送り返すという治療を受けた元自閉症患者の隊員が、攻撃的な性格の隊員から放射される敵意をそのまま送り返し、探検隊は心理的なパニック状態に陥ります。 一方、たどり着いた惑星は、森全体が一つの存在である世界であり、森は「他者」の存在を理解することができず、本能的な恐怖を探検隊に送ります。探検隊内部の緊張関係と、森と探検隊間の緊張関係が対比されてうまく描かれているとは思うのですが、作品世界にぐいぐい引きずり込まれるような魅力を感じることはできませんでした。その辺りが受賞を逃した理由かもしれません。 特集のもう一つの作品は、ラリイ・ニーヴンの「無情の月」。何度か読んだことも、破滅テーマの作品だったことっも憶えているものの、どういうストーリーだったのかさっぱり思い出せず。読み進めるとともに、うんうんそんなお話だった、とうなづいたというのが全ての感想。 太陽フレアで地球の昼側が焦がされてしまうというアイデアによる、いわば破滅もののSFですが、そういうことが実際にありうるかどうかは別として、今となっては驚くほどのアイデアのように思えません。 真夜中側を舞台にすることで昼側の災害状況を直接描かず(一瞬にして死亡でしょうから小説として描きようもないでしょうが・・・)、異常に明るい月や突然の雹、洪水等により、裏側を襲った悲劇のすさまじさを間接的に示すとともに、こういった現象から主人公が徐々に何が起きているか悟っていく様子が描かれています。 ちなみに、巻頭言によると、この年の夏は熱帯夜が続いたようです。ひょっとして、この頃(1970年代)から温暖化現象が現れ、作者はそこから太陽活動活性化というアイデアを得たのでしょうか?ま、単なる思いつきですが・・・ もっとも、この時代には真夏も今ほど暑くはなかったように思います。学生時代には、7月下旬から8月終わり頃までは田舎に帰省していましたが、エアコン(当時はルーム・クーラーといってました)なんて洒落たものは普通の家にはなく、真夏でも扇風機だけで過ごしてましたからね。そういえば、もっと昔、小学生の頃(1960年代前半頃)までは、夏には蚊帳をつり、廊下の木戸を開けて寝てましたね。蚊帳がなくなったのはいつからだったでしょうか。 ***************************** 他の4作品はこんな感じです。 「ニッポンカサドリ(河野典生)」は街の博物誌シリーズの第7作。主人公は元特攻隊員で、戦後の日本人に悲憤慷慨しながら隠遁生活を送っていましたが、ある日、小さな動物園で日の丸の頭飾りを持つ不思議なカサドリに出会います。彼が「ニッポンカサドリ」と命名した、その鳩ほどの小さな鳥は、どうしたものか檻を抜け出して彼の苫屋に現れ、餌もやらないのに日に日に大きくなっていきます。そして、ある日・・・ 作品前半で主人公の生い立ち、隠遁後の生活等が書き込まれており、どのような価値観の元で育てられたか、その結果、敗戦後の「米国かぶれ」の日本人にどういう感情を抱いているのか、いわゆる人間描写が比較的丁寧になされており、この点、本シリーズの他の作品とは異なった味わいを醸し出しています。 「亜空間要塞(半村良)」では、4人組がロスボ王の兵士に襲われている美女ヴァレリアを助け、彼女の父が指揮する山賊(実はロスボ王の独裁政権に抵抗するゲリラ部隊)の仲間になります。そして、この世界の住民はウソをつくことができない(従って謀などできない)ということに気づき、計略を使った作戦によって王の軍隊を撃破。ゲリラ部隊の信頼を得ます。 4人組はヴァレリアから、越えることのできない砂漠の話を聞き、この砂漠の奥部に亜空間の境目があると考えて砂漠に出かけます。そして、境界を越えることに成功するのですが、自分たちの体が半透明になっていることに気づきます。火星シリーズのパロディめいた展開から、チャンバライメージの冒険活劇へ、どんどん作品世界が変化していく感じで、亜空間はどうなったんだろうかと思いましたが、最後にようやくSFらしくなってきて一安心。それにしてもこの話の展開だとどう転がっていくのか予想もできません。なんでもありのストーリー展開ですね。 「ノー・コネクション(アイザック・アシモフ)」は遙か未来の北米を舞台にした、アシモフらしい皮肉の効いた一作。遙か過去に滅んだ先住民の文明を研究する考古学者が主人公です。 主人公は、別の大陸から飛行機械に乗ってやってきたという、別種の知性生物の噂を聞き、彼らに会いに出かけます。そして、彼らが北米住民を「クマ」と呼び、自分たちは「チン・パン・ジー」と称しているということを知ります。「チン・パン・ジー」達は複数のグループに分かれて戦うという、北米住民には理解のできない社会行動を取っているそうです。そして、これも理解しがたいことですが、北米にやってきた「チン・パン・ジー」は社会指導者に反対して逃げて来たとのこと。 主人公は、訪問地の科学者達が残留放射線による年代測定技術を開発したことを知り、先住民族の住居と思われる地層の年代測定を頼むのですが、とうていあり得ない年代が報告されます。これは何を意味しているのか、放射能が自然に突如増大することなどありえるのか?そうこうするうちに別大陸の「チン・パン・ジー」達が、最近強力な兵器を開発したという噂が届きます。 さて、最後の作品は「されば荒れ野に水わきいで……(ゼナ・ヘンダースン)」です。今月号一押しの名作(ま、好みの問題ですが)。 1800年代の末期、中西部の荒れ野で農業を営む一家の長男(主人公、まだ少年です)が、燃え上がる飛行物体が空をかすめ、やがて多数の物体を発射するのを目撃します。そして、そのうちの一つが主人公の近くに激突し、そのカプセルの中からやけどを負った同じ年代の少年を助け出します。一家は水不足に苦しみながらも、この少年を介護し、少年は徐々に回復しています。そして、一家がついにこの不毛の地での農業に見切りを付け、翌日には移住しようと決めたその夜、少年が奇蹟を起こします。 ***************************** ところで、何か面白いネタがないかと、今月号を隅から隅まで眺めてみたところ、こんな広告がありました。「悪魔のベクトル」という題名の小説ですが「返金保証」と宣伝されています。意味分かりますか?これは、本の後半部分が紙帯で封をされていて、面白くないから後半は読まないと決めて、開封せずに返却すると本代を返してくれるという仕掛けです。 果たしてどれだけの人が返金請求したのか不明ですが、割と短期間でこんな宣伝を見かけなくなったところを見ると、あまり販売に貢献しなかったのか、それとも返金要求が殺到したのでしょうか?うーん、謎です。 今月号は「すぺーす・たいむ・あんてな」にも興味深い記事が載っていました。グラスファイバー(今でいう光ファイバー)による光通信技術を紹介する内容で、工業技術院の電子技術総合研究所が、ファイバーの中心部を石英にすることにより伝送損失を飛躍的に低下させることに成功したそうです。 記事は「情報化はますます進み、必要とする情報量も日ましにふえるに違いない。」と今から思うとえらく的確な予想を述べ、さらに「やがてはガラスの電線が街に張りめぐらされる、ということも考えられる。グラスファイバーは、未来の通信の主役となることだろう。」と結んでいます。 35年前ですよ!私なんぞは、こんな記事が載っていることにも気づきませんでしたし、電話回線でコンピュータと通信できるってことを知ったのがこの2年後。1973年当時持っていた最もハイテクな機器はラジカセ(これも死語かなー)でした。光通信など夢にも知らず、毎晩、本を読みながらサントリーホワイト(安かったので)をぐいぐい飲み、ラジオの深夜放送を聞くうちに眠りについてたっけ。そもそも街中にもIT機器なんて洒落たものはありませんでしたね。銀行にもATM端末なんてなくて、15時過ぎるとお金をおろすこともできなかったしね。 そうか、そんなふうに情報にうぶな時代だったから「帝国よりも大きくゆるやかに」に描かれている異星の姿や、「無情の月」のフレア爆発に素直にセンス・オブ・ワンダーを感じることができたのかも。と、ムリヤリ冒頭の作品紹介に結びつけたところで、今月号の紹介は終わりです。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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