|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
***************************** まず前半は、「キャプテンたずねて三光年」、「タイム・ジャック」、「出帆旗、宣候!」、「死はわが職業」、「白村江」、「金の卵」の6作品。 「キャプテンたずねて三光年」は後回しにして、このほかの5作品を、個人的におもしろかった順に紹介します。 「金の卵」は、突然運が向いてきた男の出世談。合間合間に、「この男に金をもうさせたまえ」という祈りが挟まれます。男に幸運が訪れた理由は、この祈りと関係があるのか、また、こんな祈りを捧げているのは誰なのか?冒頭から話に引き込まれていきます。星新一さんの作品の中でも秀作に入るのではないかと思います。 「タイム・ジャック」は、歓楽街や18ホールのゴルフ場まで備えた超大型タイムマシンが乗っ取られるお話。小松左京さんらしくない、どたばたコメディです。しかもただの「どたばたコメディ」ではなく、路地裏のどぶに赤子の死体が浮かんでいるといったブラックな情景をさりげなく混ぜたり、機体が揺れると登場人物のせりふも揺れたりと、筒井康隆風の「どたばたコメディ」です。 扉の挿絵上部に『O誌の「日本以外全部沈没」の返礼として』と書かれており、つまり意図的に筒井康隆を真似た作品です。扉にはさらに「いかなる実在の人物、事件もモデルにしていません」とありますが、この年(1973年)7月20日に日航機ハイジャック事件が起きており、この事件のパロディであることは明らか。 さらに、作品中の登場人物「大杉酔狂」が「小松左京」、「月古市」が「星(新一)」であることも明らか。ということは新妻とともに時間旅行に参加し、話が始まるやいなや妻といちゃつき始めたた主人公(「おれ」)は「筒井康隆」という設定でしょう。それに気づくと「大杉がおれの仲人(小松さんが筒井夫妻の仲人であるというのは実話)で、仲人する代わりにやると約束した初夜権」というくだりには、にんまりしてしまいます。まさか文字通りではないのでしょうが、おそらく酒の勢いでなにやら怪しい冗談が交わされたのかと。 ところで、前述のハイジャック事件は、「よど号事件(1970年)」ではありませんが、同じく赤軍派による事件で、1970年代には、赤軍派によるハイジャックがこの他に1件起きています(1977年)。ハイジャックの当たり年ですね。1973年の事件そのものは定かな記憶がありませんが、そのころ、大学校門前に警官隊が検問所を作り、手荷物検査を受けた記憶があります、「ちょっと見せて下さい」と言葉をかけるやいなや、バッグに手をかけて中身を見るというやりかたに、いわゆる「ノンポリ」の私ですら軽い怒りを感じたことを覚えています。こんなに頻繁に大事件が起きる時代なので、しかたがなかったのでしょうが・・・ そういえば、この年の8月には金大中(当時はニュースで「キム・デジュン」ではなく「きん・たいちゅう」と発音していましたが)事件も起きています。連日のようにラジオにニュースが流れていました(当時、私はTVを持っていませんでした)。まさか、この人が後の韓国大統領になるとは・・・人の運命とは分からないものです。 「死はわが職業」は、過去の記憶を失ったサイボーグを主人公としたアクションSF。主人公は、木星探検のために志願して強靱な体を持つサイボーグになったのですが、任務のさなか事故に遭い、それがきっかけで逃亡します。彼は、理由は分からないものの「火星にバラ園を作らなければならない」という強迫観念にとりつかれています。そして、大金を稼いでこの夢を実現すべく、「殺され屋」つまり殺し屋のターゲットにされてしまった他人(大抵は仕事をしくじったマフィア幹部等、悪いやつですが)になりすまして代わりに殺されたふりをする、というユニークな仕事を始めます。 「出帆旗、宣候!」も、やはりサイボーグが主人公。年を取って探検隊から声がかからなくなった主人公ですが、なおも宇宙での仕事を諦めきれずにいます。ある日、とある惑星で異星人の痕跡が発見され、過去に接近遭遇の経験を持つ主人公が調査隊に参加することになります。サイボーグである主人公と、サイボーグになり宇宙の果てまで探検することを切望する若者、そして、若者を火星にとどめたいと願う恋人。この3人が主要な登場人物で、異星調査中の事件に、若者のサイボーグ願望が織り交ぜられながら話が進みます。そして、エピローグで、恋人たちの末路が語られます。未来の出来事を背景として人間ドラマを語るという、典型的な光瀬龍スタイルのSFです。サイボーグ 「白村江」は、これも、作者お得意の日本古代を舞台にしたタイムパトロールもの。紀元7世紀前半の日本に忍び込んだ歴史改変者を追いつめるお話です。 ***************************** 中盤は「オカルト・エッセイ特集」と銘打っていますが、オカルトと言うよりも、殆どは擬似科学に属するエッセイです。典型的なのは、シンクレア・ルイス(ノーベル文学者)の「霊魂かテレパシーか?」で、さまざまな「実験」を証拠として「霊魂またはテレパシーの存在以外には説明がつかない」と結論づけています。このエッセイと同列に扱われてしまっては、ユンクも墓の中で憤慨しているのではないでしょうか。 ***************************** もう一つの書き下ろし作品「キャプテンたずねて三光年」は、小説と言うより、むしろ、小説の体裁を取った、スペース・オペラ紹介です。主人公の野田大元帥が、たまたま助けたオットーとともに、行方不明のキャプテンフューチャーを捜索するという筋立てで、捜索の過程で、さまざまなスペース・オペラのヒーロー・ヒロインと邂逅します。この作品は、本誌冒頭の15ページと、国内書き下ろし最後となる5ページに分けて掲載されています。おそらく、昔の米国SFの世界に誘い、これを受けて、米国古典SFが続く、という構成にしたものと思われます。 ***************************** |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
後半は、「クラシック名作特集」と銘打って、1929年から40年の米国SFが紹介されています。各作品のあらすじ(および感想)は下表の通りです。これを読んでいただければ推察できるように、個人的に気に入ったのは、#4の「人生の部屋」。今となっては目新しい趣向ではありませんが、下層人生体験というアイデアが、約80年前(この雑文は2008年5月3日執筆)に生まれていたということ自体にセンス・オブ・ワンダーを感じます。 逆に、素直に感情移入できなかった作品は、#3と#5。#3の「宇宙の反乱者」は、主人公たちがあまりにも身勝手すぎて、これが鼻につきます。無実の罪で流刑されて怒りに燃えるのは分かるけど、だからといって流刑地に大災害を起こして他の囚人(他にも無実の罪で流刑された人がいるかも)を犠牲にするというのは行き過ぎでしょう。さらに、旅客船を強奪するのも感心できないし、その上、無実の乗客を見殺しにして逃げ出すに至っては、言語道断です。話のテンポは悪くないのですが、そんな感じで、主人公のモラルの低さに噴飯しながら読破してしまいました、 #5の主人公の場合は、あまりに無計画というか、思慮が欠如しているのが、お気に気に召さない最大の理由です。この作品を読んでいて、昔どこかで読んだ「白痴プロット(主人公が白痴でさえなければ、簡単に事件が解決できるストーリー)」という言葉を思い出してしまいました。ちなみに、この「白痴」という単語も今では差別用語扱いですね。「精神に高度の障害を負った人のプロット」とでも言い換えないとダメなのでしょうか? #1と#2は、特に反感を感じることなく読むことはできましたが、ご都合主義というか、むりやりに結論に突き進んでいるような感じは否めません。例えば、「火星ノンストップ」で、地球から火星まで空地を輸送できるような科学・技術力を持った集団を、拳銃一丁の主人公が退治するとか、「火星からの使者」で、既に小惑星帯を探査済みの火星人が、世界地図と大気成分を教えてもらわないと地球に到来できないとか、そんなところですね。 以上のように、いずれの作品も多かれ少なかれご都合主義的にストーリーが進むのですが、逆に理詰めでないだけに、ぽんぽんと小気味よく話が展開していきます。これがクラシックの醍醐味でしょうか。
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||