1973年9月号(176号)

ハヤカワSFマガジン176号表紙
(C) 早川書房
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(各号の掲載作品について、読者が1〜5点の範囲でハガキ投票を行い、平均点が高い作品を掲示していました。4点を超える作品は滅多にありませんでした。今回は1973年6月号の結果発表です。)
順位 題名 作者 得点
1 その顔はあまたの扉…… ロジャー・ゼラズニイ 3.85
2 魔法の窓 ロバート・F・ヤング 3.79
3 プレリードッグ 河野典生 3.54
4 満員御礼 ハーラン・エリスン 3.29
5 尖塔の怪異 ロバート・ブロック 3.25
6 地底の住人 エイブラム・メリット 3.17
今月号は中編小説が一挙に3篇掲載され、そのため掲載作品数は4編のみとなっています。ただし数は少なくても内容的には読み応えのある作品揃い。

以下、ちょっぴり気合いを入れてご紹介しましょう。

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1)亜空間要塞(半村良)

亜空間要塞というタイトルだけを示されたらどんな内容を想像しますか?ちょい悪主人公が活躍するアクションSFでしょうか。少なくとも雀荘で遊ぶ4人組のユーモラスな会話ではありませんよね。

この作品、まるで読者の期待をはぐらかすかのようにそんな場面からお話が始まります。ちなみにこの4人組全員、芸能人の駄洒落ネームが付けられていますが、さらに実在のSF業界人をパロディっているという話もどこかで聞きました(自信はないので間違っていたらゴメン)。

今月号から4回連載される予定です。シリーズ第1回の今月号では、長年行方不明となっていた主人公の叔父が精神喪失状態で突然現れ、このナゾを解くために、4人組は叔父が介護されている別荘に行きます。するとその夜、空飛ぶ円盤が現れ、叔父を拉致。目撃していた4人組は次元の狭間に吹き飛ばされてしまいます。

そして4人組が目を覚ますと、そこは別世界。どうやらタイトルのうちの「亜空間」と関係ありそうな展開にはなってきましたが、「要塞」の方は影も形も現れないままに第1回が終了。ま、この展開ならどんな方向にでも話が広がりそうなので、どこかで出現するのかな、と期待させつつ次号に続きます。

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2)ザルツブルグの小枝(河野典生)

こちらも次元テーマですが、亜空間要塞と違ってメルヘンタッチな作品です。街の博物誌シリースなので、あたりまえか・・・

当時の言葉で言えばヒッピー生活を送る若者達が次元のひずみを目撃する話。特に大事件が起きるわけではなく(といっても「次元のひずみ」自体が大事件ではあるわけですが)、ある夜の間、森が海の底に沈み、小枝にこびりついた塩の結晶が朝日を浴びてきらめいていたり、便器の下に大海原が広がっていたり、そんな出来事を目撃して、奇妙な美しさに心奪われるといった内容。

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3)メデューサとの出会い(アーサー・C・クラーク)

一言でいえば「気球による木星探査記録」です。もう少し説明するなら、熱水素気球型探査機を木星大気内に打ち込み、人の目による直接観測を行うというアイデアを小説化した作品です。

クラークらしく、大気を構成する物質とその比率、温度、気圧等の知られている限りの木星に関する事実に基づき、炭化水素の泡が形成する「山脈」など、不思議にリアリティのある世界が描かれています。

この作品は、主人公が船長として乗船していた巨大飛行船の墜落事故を描いた前段部分と、同じ主人公による木星探検場面の後段部分、そして前段と後段とをつなぐ短い幕間、および同じく短い結末シーンから構成されています。技法的には前段部分が結末シーンの伏線になっており、また後段部分における主人公の行動や感情にも絡み合っているのですが、個人的には、木星探検場面が最も心惹かれる部分で、前段と結末は添え物のようにしか感じられません。

ひょっとしたら作者自身も木星大気内の光景を描写したいがためにこの作品を執筆し、ただそれだけでは小説として読ませることが難しいために、前段を書き加えて小説としてのストーリーを作り出したのかもしれない、そんな気がしました。

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4)空気と闇の女王(ポール・アンダースン)

こちらは遠未来の惑星ローランドが舞台。未踏の北極圏調査に連れて行った幼い我が子が失踪し、母親が惑星唯一の私立探偵に捜索を依頼します。

子供が超自然的な存在にさらわれるという設定は同じ作者の「大魔王作戦」の終盤と共通していますが、「空気と闇の女王」はこのタイトルから想像するようなファンタジーではありません。あえてジャンル分けするならセカンド・コンタクトものでしょうか。

本作品はファンタジーではないのですが、ほのかな北極光の下、墓標石に寄り添って愛を交わしている銀髪の若者といった冒頭シーンをはじめ、幻想的な背景描写がちりばめられており、全篇を通してファンタジックな香りを楽しむことができます。

なお、主人公の探偵は、あきらかに某著名探偵のパクリ(この探偵の子孫であることを暗示する一文もあります)です。本作品を読まなくても「シェリンフォード」という探偵名でWEB検索すれば、誰のパクリなのかすぐに分かります。これは単なる読者サービスなのか、それともシェリンフォードを主人公にした連作でも考えていたのでしょうか。

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ところで、今月号はヒューゴー・ネビュラ賞作品特集で、「メデューサとの出会い」はヒューゴー賞長中篇部門2席、「空気と闇の女王」は両賞の(長)中篇部門受賞作です。なんだかんだいっても両賞にノミネートされる作品には外れがありませんね。

ちなみに、この年(1972年)のヒューゴー賞、ネビュラ賞獲得作品は下表の通りです。それぞれの受賞作品が大きく食い違う理由の一つは、選考対象期間が違うためで、例えば「神々自身」は翌年のヒューゴー賞を受賞しています。

部門
ヒューゴー賞(1972年)受賞作品・作者
ネビュラ賞(1972年)受賞作品・作者
長篇 果しなき河よ我を誘え
(To Your Scattered Bodies Go)
フィリップ・ホセ・ファーマー 神々自身
(The Gods Themselves)
アイザック・アジモフ
長中篇 空気と闇の女王
(The Queen of Air and Darkness)
ポール・アンダースン 失踪した男
(The Missing Man)
キャサリン・マクリーン
中篇 (受賞作品なし)
-
空気と闇の女王
(The Queen of Air and Darkness)
ポール・アンダースン
短篇 無常の月
(Inconstant Moon)
ラリイ・ニーヴン ヴァチカンからの吉報
(Coog News From the Vatican)
ロバート・シルヴァーバーグ

全掲載内容
コンテンツ
作者
ページ
表紙イラストレーション 角田純男
表紙
広告 三和銀行の広告
 サンワ2年定期
-
表紙内側
巻頭言(最近の出来事、今月号の紹介等) M・M 画:中島靖侃
1
1
目次 画:中島靖侃
2
3
(連載第5回)思考の憶え描き
 火山計画
真鍋博
4
11
(連載第1回)ロン先生の虫眼鏡
 小さな者たちの弁護人
光瀬龍 画:石川球太
12
16
(短期連載第1部)
 亜空間要塞
半村良 画:金森達
17
51
連作<街の博物誌>パート6
 ザルツブルグの小枝
河野典生 画:新井苑子
52
60
SF論壇 特別寄稿
 宇宙の人形師(上)ーフィリップ・K・ディック論
デヴィッド・エルワード
 訳:浅倉久志
61
81
(連載第1回)ロン先生の虫眼鏡
 小さな者たちの弁護人
光瀬龍 画:石川球太
82
89
(連載評論)夢の言葉・言葉の夢
 幻想小説の方へ
川又千秋 画:宮崎茂
90
96
連載劇画ノヴェル 新・幻魔大戦
 第四章 魔人・正雪(7)
石森章太郎、平井和正
97
112
特別企画大河漫画 鳥人大系
 第十二章 ミュータント(その5)
手塚治虫
113
119
SFでてくたあ 福島正実、石川喬司
120
121
SF スキャナー
 パステル・シティ
岡田英明
122
125
すぺーす・たいむ あんてな
 宇宙にはやはり生命が!、スカイラブの今後の課題、
 放射能は消せる?、X線宇宙のナゾ求めて
-
126
128
てれぽーと
-
129
131
(連載)サイエンス・ジャーナル
 今世紀最大の大彗星
加藤喬
132
133
1972年度ヒューゴー・ネビュラ賞特集 浅倉久志
134
135
<ヒューゴー長中篇賞第2席>
 メデューサとの出会い[A MEETING WITH MEDUSA]
アーサー・C・クラーク
 訳:伊藤典夫 画:岩淵慶造
136
148
広告 1973年度 恒例 ハヤカワ・SF・フェア
 全国主要書店にて開催 昭和48年7月1日〜8月31日
-
149
149
<ヒューゴー長中篇賞第2席>
 メデューサとの出会い[A MEETING WITH MEDUSA]
アーサー・C・クラーク
 訳:伊藤典夫 画:岩淵慶造
150
164
広告 早川書房 日本SFノヴェルズ
 産霊山秘録(半村良)、結晶星団(小松左京) 他
-
165
165
<ヒューゴー長中篇賞第2席>
 メデューサとの出会い[A MEETING WITH MEDUSA]
アーサー・C・クラーク
 訳:伊藤典夫 画:岩淵慶造
166
174
<ヒューゴー長中篇賞受賞、ネビュラ中篇賞受賞>
 空気と闇の女王[THE QUEEN OF AIR AND DARKNESS]
ポール・アンダースン
 訳:矢野徹 画:畑農照雄
175
192
広告 早川書房の出版本
-
193
200
<ヒューゴー長中篇賞受賞、ネビュラ中篇賞受賞>
 空気と闇の女王[THE QUEEN OF AIR AND DARKNESS]
ポール・アンダースン
 訳:矢野徹 画:畑農照雄
201
228
広告 73年度 全国縦断 ハヤカワ・ブック・フェア
 参加決定全国8書店 昭和48年7月1日〜7月31日
-
229
229
<ヒューゴー長中篇賞受賞、ネビュラ中篇賞受賞>
 空気と闇の女王[THE QUEEN OF AIR AND DARKNESS]
ポール・アンダースン
 訳:矢野徹 画:畑農照雄
230
232
広告 立風書房
 新しい文学的視野をひらく異色アンソロジー・シリーズ
  異形の白昼(筒井康隆編) 他
 乱歩賞作家 麻雀推理
-
裏表紙内側
広告 丸善
 日本PTA全国協議会推進 アテナ ノンシンナーボンド
 (大切な子供たちをシンナーの害から守りましょう)
-
裏表紙
凡例  :小説    :書評、SF関連の話題等    :投稿小説
   ■ :コミック  :SF周辺の話題(アート、音楽、映画等)
   ■ :投稿    :早川書房からのおしらせ等  ■ :広告