1973年7月号(174号)

ハヤカワSFマガジン174号表紙
(C) 早川書房
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(各号の掲載作品について、読者が1〜5点の範囲でハガキ投票を行い、平均点が高い作品を掲示していました。4点を超える作品は滅多にありませんでした。今回は1973年4月号の結果発表です。)
順位 題名 作者 得点
1 時の葦船 荒巻義雄 3.89
2 伝道の書に捧げる薔薇 ロジャー・ゼラズニイ 3.83
3 メールシュトロームII アーサー・C・クラーク 3.34
4 クリスタル セーウェル・
ガンソフスキー
3.04
5 奈落の底から エムツェフ&パルノフ 3.00
先月に引き続き、まずSFでてくたあから引用してみましょう。

1.日本沈没(小松左京)、2.箱男(安部公房)、3.生命を語る(池田大作)、4.タイムマシンの作り方(広瀬正)、5.同時代としての戦後(大江健三郎)。

これは、図書新聞(4月28日号)渋谷大盛堂調べによる、書籍販売ランキングです。当時はSF作品がランキング上位に位置することだけでも珍しかったのですが、それが1位と4位にランクインし、さらに境界的作品の「箱男」も含めれば、半分以上がSF作品です。70年代から80年代前半にかけてのSFブームを予感させるようなランキング結果でした。

なお、以上の他にも平井和正の狼男シリーズが文庫部門で3位。海外作品では、砂の惑星が「エコロジーSF」というふれこみで出版されています。

私もご多分に漏れず「エコロジー」という言葉の響きに惹かれて出版されるや否や読んでみたのですが、期待していたほどには面白くなかったという印象が残っています。この作品に限れば、小説よりも映画の方がずっと面白かったような気がします。

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さて、それでは今月号の作品をご紹介。まずは日本作家から始めましょう。

「歴史的事実」は作者お得意の日本古代史をテーマにした作品。孤児院育ちの主人公はそこそこ売れる写真家だったのですが、ある日古墳の魅力にとりつかれてしまいます。ちゃらちゃらしたモデルの写真なんぞ撮りたくない、古墳の魅力を写し出したいと周囲を困惑させ、ついには妻にも見限られるのですが、そんなことにはお構いなく、とある古墳を訪れます。そして・・・(謎解き風味があります。主人公が孤児院育ちということが結末の伏線になっています。)

お話もそこそこ面白いのですが、もっと面白かったのは、日本間が一つもなく、寝室にはツインのベッドが設えてあるマンション暮らしや、ジバンシーのプレタポルテが日常会話に出てくる夫婦の会話を「日本人である出目を忘れる」ほど西洋化されていると、主人公が回顧するくだりです。34年前はそういう感覚だったんですねー。今読むと「ツインのベッド」って辺りで「とっても日本人夫婦」と感じるのですが。

「アポロ再び」は、大陸間弾道弾をアポロロケット風に改造した宇宙船で月旅行を試みるお話。いち早く月に出かけたいと希望する金を持った若者達が、旅行者として選ばれようと、我先に名乗りを上げます。

ちなみに作品内の時代は1980年代ですが、既に宇宙ステーションへの旅は、世界旅行10回分程度の費用で楽しめるようになっております。

そういえば、当時は「火星旅行もまもなくだー」みたいな感覚があったのですが、一向に宇宙開発は進みませんね。それどころか、ここ20年以上、本格的な科学技術革新がなされていないような気がします。今は過去の遺産を食いつぶしてなんとかなっていますが、50年後はどうなんだろー

「マインド・ウィンド」はいわゆるニュー・ウェーブSF。地方回りの営業マンが、人々が自然に群れをなして同じ方向に歩き始める「散歩族」現象を目撃します。

散歩族は、日本の地方都市だけでなく、世界各地に出現し、やがて散歩族が海の中に歩いて行って死んでしまうという事件まで発生。これを契機に、社会問題にもなりますが、やがて現象は自然に収まり、人々もこの事件のことを忘れてしまいます。以上の経過が、東京本社に残るかそれとも地方会社に転職するかと迷い続ける主人公の行動とオーバーラップさせながら語られます。

今月号で私が最高に気に入った作品ですが(ニューウェーブ好きなんです)、それに加えて面白かったのは、3連休を取った主人公が故郷の大阪に帰ろうかどうしようかと考える辺り。なぜ迷うかというと、新幹線を使っても大阪まで3時間もかかるからです。34年後の今(2007年6月現在)でも「のぞみ」を使って2時間30分。変わってませんねー
そういえば、磁気で車体を浮かせて走らせるって研究もこのころからやっていたはずですが、その後、どうなったのでしょうか?最近の技術者はコンピュータに使われすぎて思考能力を失ってしまったのでしょうか?

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続いて海外作品です。

「待機願います」はドタバタユーモアSF。主人公は私立探偵。祭日になると象に変身するという奇妙な魔法にかけられた友人の謎を解くお話。原因となった魔法使いは簡単に探し出せたのですが、自分でも意識せずにその人の役に立つ魔法をかけてしまうという困ったな人物でした。さて、祝日に象に変身することは友人にとってどんな役に立つのか?

事件を解決するための伏線らしきものも仕掛けられており、ちょっとした謎解きも楽しめ(るかなー?)ますが、どちらかといえば頭をひねったりせずに軽く楽しむ作品でしょう。

「いつの日か」は超性能コンピュータ「マルチヴァック」が登場するシリーズの一作です。といってもこのシリーズは「マルチヴァック」がお話のどこかに登場するという点が共通するだけで、各作品間に強いつながりはないのですが(一部を除く)。

この作品の時代には、全ての仕事をコンピュータが行うようになっていて、人間はオペレータとして簡単な操作を行うか、プログラマーとして少し高度な作業を行う程度しかすることはありません。

文字も数字も不要になったため字が読めるのは過去の文化を研究している専門家だけですし、足し算なんぞできる人は誰もいません。

主人公は、そんな時代のごく平凡な男の子。お話ロボット(いろいろな「お話」を聞かせてくれるロボット)が旧式でお伽噺しかできないのが不満の種。そんな男の子の家に頭の切れる友達がやってきて、昔の文字を学んで秘密の連絡に使おうという計画を話します。二人はその話に夢中になって、友人が中途半端に分解・改良したお話ロボットを蹴飛ばして仲間を集めに出かけます。そして残されたお話ロボットは・・・

アシモフのロボットもののいくつかにある、アンチユートピア風の小作品です。

それにしても、いくらコンピュータが賢くなったからといって文字がなくなることってあるのでしょうか?通りの名前とか、ビルの名前とか、ちょっとしたお出かけの際にも文字は結構役立っていると思うのですが・・・街中から文字が消えたら不便ではないのかな?この話のストーリーとは関係なく、そんなことが気になりました。

「神よ、あなたの御手に」は、最終戦争後の世界を背景にしたお話。70年台当時は「世界終末時計」というのが流行って(?)いて、「今年は終末まであと7分です」とかいう戯れ言が話題になっていました。ウィキペディアで調べてみると今でもやっていて、ちなみに今年は終末5分前なのだそうです。そのわりには当時ほど悲観的な小説が流行らないよね?なぜでしょうか。終末が近い近いと騒がれながらもいっこうに終末が訪れないのでみんな飽きちゃったのかな。

閑話休題、ストーリーはこうです。最終戦争間際に、アンドロイドの発明者が3体のアンドロイドをそれぞれ別のシェルターに封印します。それぞれの「頭脳」には、科学・技術、生物科学、文化・芸術に関する知識を詰め込み、生き残った人類を手助けしてくれることを願ってのことでした。時は流れ、科学・技術のスペシャリスト・アンドロイドが地上に出て、人間を探し出そうとします。以降は省略。

ちょっと古めかしいお話ではありますが、1種の謎解き話としても楽しめます(どこに謎解きがあるかは読んでのお楽しみ)。ひょっとしたら何か信仰に係わるテーマもあるかもしれないけど、キリスト教徒でもない私にはその辺りは理解不能です。

「おじいちゃん」は開発途上惑星での冒険談。これも謎解き風味のあるお話です。現地の生徒2人が地域視察団のお偉いさんの案内役として、水辺に浮かぶ生きている筏に乗って移動していたところ、普段は温和しい筏が突如凶暴になり、主人公の男の子を除いた全員がツルでとらえられてしまいます。一人助かった主人公はなんとか陸地にたどり着く方法はないかと必死で考えるのですが・・・惑星の奇妙な生物層について比較的丁寧に説明されており、エキゾチック風味も味わうことができます、

「内なる殺人鬼」は、人間の体内(というか脳内というか)に住みつく精神生命体を主人公にしたお話。この手の話は人間を主人公にして、恐るべき精神生命体をやっつけるといったストーリーにするのが普通だと思いますが(「超生命ヴァイトン」なんてそうですね)、精神生命体の視点から話を進めるというのが新機軸ですね。

この生命体(実は2対1組の精神生命体ですが)人間にとりつくと元の人格を押しつぶしてしまい(まさに体を乗っ取るわけですね)、歳をとって体が使いものにならなくなると、わざと誰かに殺される状況を作り出して殺人者に乗り移るという、人間視点から見るととっても悪いヤツなのですが、不思議なことに精神生命体視点から話が進むと、「結構いいヤツじゃん」という気になってしまいます。そういえば、ジョージ・オーウェルの随筆だったか「破壊活動を警察視点から書けば悪と戦う正義の味方小説ができるし。同じ出来事を革命家視点から書けば政府の圧政から民衆を守るヒーロー小説にもできる」といった風なことが書かれてました。まさにそうですね、と実感した作品です。

ストーリーは省略。そう言いながら簡単に紹介すると、やむを得ず望ましくない体に飛び込んでしまった超生命体が、なんとか状況を制御しようとするお話。感動するほどの面白さはないのですが、なぜこれが巻末ノヴェルになっているのか、34年後の今になって分かりました。作者はフランク・ハーバート。砂の惑星で大売り出し中だったからなんですね。

てな具合に、何とかこの雑文の出だしと話を合わせたところで、今月号はここまで!


全掲載内容
コンテンツ
作者
ページ
表紙イラストレーション 角田純男
表紙
広告 三和銀行の広告
 サンワ総合口座
-
表紙内側
巻頭言(最近の出来事、今月号の紹介等) M・M 画:中島靖侃
1
1
目次 画:中島靖侃
2
3
(連載第3回)思考の憶え描き
 気球計画
真鍋博
4
11
(連載コラム第29回(最終回))SFコミックスの世界
 美しき夢見る人
KOSEI 画:水野良太郎
12
16
歴史的事実 豊田有恒 画:畑農照雄
22
30
マインド・ウィンド 山野浩一 画:長苦楽祐好
31
50
アポロ再び 高斎正 画:楢喜八
51
64
待機願います[PLEASE STAND BY] ロン・グーラート
 訳:浅倉久志 画:中島靖侃
65
83
(連載コラム第29回(最終回))SFコミックスの世界
 美しき夢見る人
KOSEI 画:水野良太郎
84
96
連載劇画ノヴェル 新・幻魔大戦
 第四章 魔人・正雪(5)
石森章太郎、平井和正
97
112
特別企画大河漫画 鳥人大系
 第十二章 ミュータント(その4)
手塚治虫
113
119
SFでてくたあ 福島正実、石川喬司
120
121
SF スキャナー
 エロスは全て子供たちのもの
団精二
122
125
すぺーす・たいむ あんてな
 木星へ第二弾、ソ連がめざす宇宙開発、第三の宇宙国イギリス、
 惑星探査にもホバー艇を、宇宙膨張説に新証拠
-
126
128
いつの日か[SOMEDAY] アイザック・アシモフ
 訳:石川智嗣 画:新井苑子
129
137
神よ、あなたの御手に[INTO THY HANDS] レスター・デル・リイ
 訳:船戸牧子 画:金森達
138
157
おじいちゃん[GRANDPA] ジェイムズ・H・シュミッツ
 訳:中村能三 画:霜月象一
158
177
(連載)サイエンス・ジャーナル
 疾風怒濤時代の天文学
加藤喬
178
179
(連載第6回)日本SFこてん古典
 続・日本かく戦えり!
横田順弥
180
189
てれぽーと
-
190
192
広告 早川書房の出版本
-
193
200
内なる殺人者[MURDER WILL IN] フランク・ハーバート
 訳:深町真理子 画:岩淵慶造
201
232
広告 立風書房
 新しい文学的視野をひらく異色アンソロジー・シリーズ
  異形の白昼(筒井康隆編) 他
 乱歩賞作家 麻雀推理
-
裏表紙内側
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 日本PTA全国協議会推進 アテナ ノンシンナーボンド
 (大切な子供たちをシンナーの害から守りましょう)
-
裏表紙
凡例  :小説    :書評、SF関連の話題等    :投稿小説
   ■ :コミック  :SF周辺の話題(アート、音楽、映画等)
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