1973年6月号(173号)

ハヤカワSFマガジン173号表紙
(C) 早川書房
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(各号の掲載作品について、読者が1〜5点の範囲でハガキ投票を行い、平均点が高い作品を掲示していました。4点を超える作品は滅多にありませんでした。今回は1973年3月号の結果発表です。)
順位 題名 作者 得点
1 庄ノ内民話考 半村良一 3.69
2 五つの運命 ポール・アンダースン 3.60
3 クロノプラスチック
1008年
藤本泉 3.36
4 ベゾアール・ゴート 河野典生 3.32
SFでてくたあで「日本沈没」が紹介されています。「九年がかりで書き下ろした千三百枚の大作」とのこと。そうか、この小説が出版されたのは私が大学生になった春だったんですね。なんとなく、もっと後のことかと思っていました。

小松左京の作品はそこそこ読んでいるのですが、生来のひねくれ癖が災いして日本沈没はさらっと目を通したこともありません。みんなが読んでいると聞くと読む気が失せるもので・・・もっとも、当時は随分話題になったので、最後に大雪山から脱出する(そうなんだよね?)といった断片だけを知ってたりします。

そういえば「プレートテクトニクス」だの「大陸移動」といった用語が一般に知られるようになったのは、この小説の効用でしょうか?

ちなみに、SFでてくたあには「帰るべき故郷を失った日本民族が今後どんな運命をたどるか、第二部の完成が待ち遠しい」とも書かれていますが、昨年(2006年)ようやく出版されたようですね。

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今月号は「クラシックSF特集」。先月と対極的な特集ですね。1950年〜60年初出の4作品が掲載されています。

「渦動破壊者」はレンズマン・シリーズの外伝。同名の長編作品(?)が創元推理文庫から出版されています。少なくとも主人公や大まかなストーリーは同じなので、今月号の短編を長編化したものか、あるいは本誌に掲載されているのが長編の冒頭部分そのものなのか、いずれかでしょう。

原子エネルギーから危険な「渦動」が発生し、それが何十年以上も成長を続けるという、科学的に説明するのは難しそうなアイデアに基づいた作品ですが、E・E・スミスの作品について科学的根拠をうんぬんするのがそもそも間違いでしょうね(いや悪口ではなくて)。もっとも本誌掲載作品についていえば、レンズマン・シリーズやスカイラーク・シリーズの理屈抜きの楽しさも感じられません。

「渦動」によって家族を失った主人公が渦動破壊者となるまでの経緯をダイジェストで紹介してみました、といった感じです。やはりE・E・スミスは長編でなければだめなのか?長編版の「渦動破壊者」はもっとワクワクさせてくれる作品なのでしょうか?

「飢えた密林人」は、はるか昔、剣と魔法の時代のお話。「タンディラの眼」(SFマガジン1971年10月増刊号掲載)と同じくポサイドニク大陸を舞台にしており、「タンディラの眼」で主人公を演じたふとっちょの魔法使いデレゾングが、いわば助演男優として登場します。

主人公は若くて未熟な魔法使いの青年。奴隷市場で見初めた美女を自分のものにしようとドタバタ騒ぎを引き起こしますが、最後に笑うのはデレゾングです。・・・ってことは出番は少ないものの主人公はデレゾングかい?

「尖塔の怪異」はクトゥルー神話の一遍。H・P・ラヴクラフト自身による「闇に這う者」(SFマガジン1972年9月増刊号掲載)の続編ないしは後日談です。「闇に這う者」で変死したロバート・ブレイクの親友が15年かけてその死の謎を解き明かそうとします。お話に原子力が登場するのが目新しいところ。この時代(初出は1950年)には原子力は悪神と同じほどに禍々しいものだったのでしょうか?

「地底の住人」もクトゥルー神話の一遍といっても違和感はないのですが、どうも別系統の「神話」のようです。アラスカを探検する2人の青年が、ある夜、大怪我を負った男と出会います。男は腕や膝が骨が見えるほど傷ついており、それでもぼろぼろになった両手両足で這い続けようとしていました。男は助けてくれた二人に、「手の山」深く横たわる恐るべき魔の土地について語り、語り終わると共に息を引き取ります。古典的な怪異談の典型的な構成ですね。

今考えると「尖塔の怪異」にしても「地底の住人」にしても、どうしてこれを読んで怖いと感じたのか不思議でなりません。やはり20代の頃は無垢だったということでしょうか?

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他の外国作品は「満員御礼」「魔法の窓」「その顔はあまたの扉、その口はあまたの灯」の3作品。個人的には特集作品よりも、この3作品の方が楽しめました。

「その顔はあまたの扉、その口はあまたの灯」は一種のラブコメです。多分、この作品についてそんな紹介するのは私だけだと思いますが、いいんです。誰がなんといおうと、これは巨大魚(全長100m)釣り冒険談の仮面をかぶったラブコメです。

金星で釣り師業を営む男が、大金持ちのお嬢様(お姉様?)に雇われて、巨大魚イッキーを釣り上げる旅に同行、最終的に釣りを成功させるというストーリー。二人の過去が徐々に明かされ、さまざまな事件が起きると共に二人の間にあったわだかまりが解けていきます。さすがロジャー・ゼラズニイです。

「満員御礼」もハーラン・エリスンらしいダーク・ジョークが効いた短編。ある日、ニューヨーク上空に停止し、毎日決まった時間になると見事な舞台を披露する謎の宇宙船。その不可思議ながら魅力あふれる演技は世界中の人々を魅了します。そしてある日・・・
この作品は結末書いちゃだめでしょうね。後はご自分で確認下さい。

最後になりましたが、「魔法の窓」もまたロバート・F・ヤングらしい、繊細な優しさにあふれながらちょっぴりほろ苦い現代の寓話です。あなたはビルに囲まれたオフィス街の窓から光り輝く草原や雪を抱いた山々を望むことができますか?「魔法の窓」の登場人物エイプリルは、心さえ失わなければ、そして見ようと勤めさえすれば、どんなものでも見ることができると語りかけます。

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今月の日本作品は「プレリードッグ」一遍のみ。父親が子供に、空に穴を掘って暮らしているアベコベ国の住民についてのお話を聞かせるという構成。アベコベ国の住民は平和に暮らしていたのに、最近では恐ろしい地底族に生活を脅かされているそうです。いつもと違ってホラーっぽい後味がなく、むしろストレートに、(自分たちの生活を豊かにするためだけに平和なプレリードッグを絶滅させようとする)人間社会を皮肉った内容になっています。

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今月号のご紹介はそんなところです。

冒頭に「日本沈没」、最後に「プレリードッグ」を持ってきたのは、両作品の背景にある「社会批判」と、当時の世相(学生運動の残り火がくすぶり続けていました)を結びつけて何か語ってみようかと企てたためですが、あまりにも自分らしくない真面目な文章になりそうなので止めました。では


全掲載内容
コンテンツ
作者
ページ
表紙イラストレーション 角田純男
表紙
広告 三和銀行の広告
 サンワ総合口座
-
表紙内側
巻頭言(最近の出来事、今月号の紹介等) M・M 画:中島靖侃
1
1
目次 画:中島靖侃
2
3
(連載第2回)思考の憶え描き
 蝶計画
真鍋博
4
11
(連載コラム第28回)SFコミックスの世界
 キャプテン・アメリカはふたり!
KOSEI 画:水野良太郎
12
16
解説 クラシックSF特集 野田宏一郎
17
21
渦動破壊者[THE BORTEX BLASTER] E・E・スミス
 訳:井上一夫 画:斉藤和明
22
40
飢えた密林人[THE HUNGRY HERCYNIAN] L・スプレイグ・ディ・キャンプ
 訳:津川輝一郎 画:岩淵慶造
41
62
尖塔の怪異[THE SHADOW FROM THE STEEPLE] ロバート・ブロック
 訳:関口幸男 画:楢喜八
63
82
地底の住人[THE PEOPLE IN THE PIT] エイヴラム・メリット
 訳:川口正吉 画:斉藤和明
83
99
(連載)サイエンス・ジャーナル
 シンクタンクと超能力
加藤喬
100
101
満員御礼[S.R.O] ハーラン・エリスン
 訳:浅倉久志 画:霜月象一
102
112
特別企画大河漫画 鳥人大系
 第十二章 ミュータント(その3)
手塚治虫
113
119
SFでてくたあ 石川喬司、柴野拓美
120
121
SF スキャナー
 ライフスタイル/デススタイル?
岡田英明
122
125
すぺーす・たいむ あんてな
 動くクレーン・チェア、植物にも”感情”がある、
 工業化された光線加工、惑星Xは幻だった?、
 月の「陸」と「海」の差、通信はガラスの電線で
-
126
128
連作<街の博物誌>パート4
 プレリードッグ
河野典生 画:新井苑子
129
136
広告 早川書房 日本SFノヴェルズ
 継ぐのは誰か?(小松左京)、牙の時代(小松左京)
-
137
137
連作<街の博物誌>パート4
 プレリードッグ
河野典生 画:新井苑子
138
138
魔法の窓[THE MAGIC WINDOW] ロバート・F・ヤング
 訳:伊藤典夫 画:長苦楽祐好
139
146
(連載第5回)日本SFこてん古典
 日本かく戦えり!
横田順弥
147
158
連載劇画ノヴェル 新・幻魔大戦
 第四章 魔人・正雪(4)
石森章太郎、平井和正
159
174
早川書房SF刊行満15年記念企画
 SF三大コンテスト募集!(小説、漫画・劇画、アート)
 〆切:昭和48年4月30日
 <SF小説コンテスト>
  選考委員:小松左京、星新一、筒井康隆、石川喬司、
       福島正美、森優
  賞金:第一席(十万円)、第二席(五万円)、第三席(三万円)
 <SF漫画・劇画コンテスト>
  選考委員:手塚治虫、石森章太郎、小野耕世、森優
  賞金:第一席(五万円)、第二席(三万円)、第三席(二万円)
 <SFアートコンテスト>
  選考委員:真鍋博、武部本一郎、野田宏一郎、森優
  賞金:第一席(三万円)、第二席(二万円)、第三席(一万円)
-
175
177
(連載コラム第28回)SFコミックスの世界
 キャプテン・アメリカはふたり!
KOSEI 画:水野良太郎
178
187
新作SFレコード評
 デマ
山野浩一
188
188
広告 SFマガジン・CBSソニー共同企画 SF+ジャズ
 デマ(原作:筒井康隆、編曲:佐藤允彦)
-
189
189
てれぽーと
-
190
192
広告 早川書房の出版本
-
193
200
その顔はあまたの扉、その口はあまたの灯
[THE DOOR OF HIS FACE,THE LAMP OF HIS MOUTH]
ロジャー・ゼラズニイ
 訳:大谷善次 画:金森達
201
232
広告 立風書房
 新しい文学的視野をひらく異色アンソロジー・シリーズ
  異形の白昼(筒井康隆編) 他
 乱歩賞作家 麻雀推理
-
裏表紙内側
広告 丸善
 日本PTA全国協議会推進 アテナ ノンシンナーボンド
 (大切な子供たちをシンナーの害から守りましょう)
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裏表紙
凡例  :小説    :書評、SF関連の話題等    :投稿小説
   ■ :コミック  :SF周辺の話題(アート、音楽、映画等)
   ■ :投稿    :早川書房からのおしらせ等  ■ :広告