| ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
小松左京の作品はそこそこ読んでいるのですが、生来のひねくれ癖が災いして日本沈没はさらっと目を通したこともありません。みんなが読んでいると聞くと読む気が失せるもので・・・もっとも、当時は随分話題になったので、最後に大雪山から脱出する(そうなんだよね?)といった断片だけを知ってたりします。 そういえば「プレートテクトニクス」だの「大陸移動」といった用語が一般に知られるようになったのは、この小説の効用でしょうか? ちなみに、SFでてくたあには「帰るべき故郷を失った日本民族が今後どんな運命をたどるか、第二部の完成が待ち遠しい」とも書かれていますが、昨年(2006年)ようやく出版されたようですね。 ***************************** 今月号は「クラシックSF特集」。先月と対極的な特集ですね。1950年〜60年初出の4作品が掲載されています。 「渦動破壊者」はレンズマン・シリーズの外伝。同名の長編作品(?)が創元推理文庫から出版されています。少なくとも主人公や大まかなストーリーは同じなので、今月号の短編を長編化したものか、あるいは本誌に掲載されているのが長編の冒頭部分そのものなのか、いずれかでしょう。 原子エネルギーから危険な「渦動」が発生し、それが何十年以上も成長を続けるという、科学的に説明するのは難しそうなアイデアに基づいた作品ですが、E・E・スミスの作品について科学的根拠をうんぬんするのがそもそも間違いでしょうね(いや悪口ではなくて)。もっとも本誌掲載作品についていえば、レンズマン・シリーズやスカイラーク・シリーズの理屈抜きの楽しさも感じられません。 「渦動」によって家族を失った主人公が渦動破壊者となるまでの経緯をダイジェストで紹介してみました、といった感じです。やはりE・E・スミスは長編でなければだめなのか?長編版の「渦動破壊者」はもっとワクワクさせてくれる作品なのでしょうか? 「飢えた密林人」は、はるか昔、剣と魔法の時代のお話。「タンディラの眼」(SFマガジン1971年10月増刊号掲載)と同じくポサイドニク大陸を舞台にしており、「タンディラの眼」で主人公を演じたふとっちょの魔法使いデレゾングが、いわば助演男優として登場します。 主人公は若くて未熟な魔法使いの青年。奴隷市場で見初めた美女を自分のものにしようとドタバタ騒ぎを引き起こしますが、最後に笑うのはデレゾングです。・・・ってことは出番は少ないものの主人公はデレゾングかい? 「尖塔の怪異」はクトゥルー神話の一遍。H・P・ラヴクラフト自身による「闇に這う者」(SFマガジン1972年9月増刊号掲載)の続編ないしは後日談です。「闇に這う者」で変死したロバート・ブレイクの親友が15年かけてその死の謎を解き明かそうとします。お話に原子力が登場するのが目新しいところ。この時代(初出は1950年)には原子力は悪神と同じほどに禍々しいものだったのでしょうか? 「地底の住人」もクトゥルー神話の一遍といっても違和感はないのですが、どうも別系統の「神話」のようです。アラスカを探検する2人の青年が、ある夜、大怪我を負った男と出会います。男は腕や膝が骨が見えるほど傷ついており、それでもぼろぼろになった両手両足で這い続けようとしていました。男は助けてくれた二人に、「手の山」深く横たわる恐るべき魔の土地について語り、語り終わると共に息を引き取ります。古典的な怪異談の典型的な構成ですね。 今考えると「尖塔の怪異」にしても「地底の住人」にしても、どうしてこれを読んで怖いと感じたのか不思議でなりません。やはり20代の頃は無垢だったということでしょうか? ***************************** 他の外国作品は「満員御礼」「魔法の窓」「その顔はあまたの扉、その口はあまたの灯」の3作品。個人的には特集作品よりも、この3作品の方が楽しめました。 「その顔はあまたの扉、その口はあまたの灯」は一種のラブコメです。多分、この作品についてそんな紹介するのは私だけだと思いますが、いいんです。誰がなんといおうと、これは巨大魚(全長100m)釣り冒険談の仮面をかぶったラブコメです。 金星で釣り師業を営む男が、大金持ちのお嬢様(お姉様?)に雇われて、巨大魚イッキーを釣り上げる旅に同行、最終的に釣りを成功させるというストーリー。二人の過去が徐々に明かされ、さまざまな事件が起きると共に二人の間にあったわだかまりが解けていきます。さすがロジャー・ゼラズニイです。 「満員御礼」もハーラン・エリスンらしいダーク・ジョークが効いた短編。ある日、ニューヨーク上空に停止し、毎日決まった時間になると見事な舞台を披露する謎の宇宙船。その不可思議ながら魅力あふれる演技は世界中の人々を魅了します。そしてある日・・・ 最後になりましたが、「魔法の窓」もまたロバート・F・ヤングらしい、繊細な優しさにあふれながらちょっぴりほろ苦い現代の寓話です。あなたはビルに囲まれたオフィス街の窓から光り輝く草原や雪を抱いた山々を望むことができますか?「魔法の窓」の登場人物エイプリルは、心さえ失わなければ、そして見ようと勤めさえすれば、どんなものでも見ることができると語りかけます。 ***************************** 今月の日本作品は「プレリードッグ」一遍のみ。父親が子供に、空に穴を掘って暮らしているアベコベ国の住民についてのお話を聞かせるという構成。アベコベ国の住民は平和に暮らしていたのに、最近では恐ろしい地底族に生活を脅かされているそうです。いつもと違ってホラーっぽい後味がなく、むしろストレートに、(自分たちの生活を豊かにするためだけに平和なプレリードッグを絶滅させようとする)人間社会を皮肉った内容になっています。 ***************************** 今月号のご紹介はそんなところです。 冒頭に「日本沈没」、最後に「プレリードッグ」を持ってきたのは、両作品の背景にある「社会批判」と、当時の世相(学生運動の残り火がくすぶり続けていました)を結びつけて何か語ってみようかと企てたためですが、あまりにも自分らしくない真面目な文章になりそうなので止めました。では | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
| ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||