1973年3月号(170号)

ハヤカワSFマガジン170号表紙
(C) 早川書房
<人気カウンター>
(各号の掲載作品について、読者が1〜5点の範囲でハガキ投票を行い、平均点が高い作品を掲示していました。4点を超える作品は滅多にありませんでした。今回は1972年12月号の結果発表です。)
順位 題名 作者 得点
1 産霊山秘録 半村良 3.79
2 幻覚の地平線(前篇) 田中光二 3.61
3 追憶売ります フィリップ・K・ディック 3.59
4 白い環 荒巻義雄 3.54
掲載5作品をワタシの好み順に並べると、「五つの運命」、「庄内民話考」、「クロノプラスチック1008年」、「ベゾアール・ゴート」、「就職の条件」てな感じです。紹介は逆順にやってみましょう。

*****************************

「就職の条件」は、火星への帰郷を熱望している地球暮らしの宇宙飛行士が、火星行き貨物船に採用されて故郷に帰るという、それだけの話です。冒険も謎解きもありません。地球で懐かしの火星を夢み、宇宙船で火星まで行き、そして火星では・・・と、最後の・・・の部分がおちになっているのですが、パンチが効いていないというか、アメリカンジョークじゃないけど何が面白いのか良く分かりません。

「ベゾアール・ゴート」は「街の博物誌」シリーズの第2話。先月号に掲載された第1話「メタセコイア」の紹介で「『植物』を小道具にした連作」と紹介しましたが、これは間違いですね。ごめんなさい <(_ _)>

「ベゾアール・ゴート」は「メタセコイア」と比べると、相当にストーリー性があります。主な登場人物は、自然食品の販売人と普通のサラリーマン。この販売人、梅雨の頃は貧相な中年男だったのですが、毎日ランニングしながら販売を続けるうちに肉体改善が進み、最後には奥様方や子供達に大人気の筋肉アイドルに変身します。一方、中年サラリーマンは販売人にも自然食品にも懐疑的。いきつけの飲み屋でいつも憤慨しているのですが、最後には・・・
全体的にはマイルドなホラー小説といった味わいです。

「クロノプラスチック1008年」は分類するなら社会派SFといったところでしょうか。社会主義国となった21世紀中頃の日本および源氏物語が執筆された当時の京都が舞台。

日本ソビエト政府は「源氏物語はソビエト日本が世界に誇る一大長編小説であり、紫式部が女性特有の鋭い社会批判をもって書き上げたものである」という見解を公式に発表しており、これに反する主張は許されません。主人公が小学生の頃、父親は著名な国文学者だったのですが「源氏物語の著者は紫式部ではなく男性である」という論文を発表したために、母親ともに「治療のため」精神病院に強制入院させられ、2人とも院内で死亡しました。

主人公は地方役人を職業としているのですが、密かに源氏物語と紫式部について研究を行い、さらに偶然にも源氏物語が執筆された時代へのタイムトラベルを許され、その結果、父親の論文が正しかったという確証を得ます。そしてアングラ雑誌にこの結論を発表し、これまた精神病院に強制入院させられます。

体制に反抗した若者が精神病院に入れられ「治療」を受けるという構図はアーシュラ・K・ル・グィンの「薔薇の日記」(SFM1983年2月号掲載)と同じですが、結末はずっとポジティブ。もっとも、どちらが好きかと聞かれれば、ル・グィンに軍配を上げますが(わたしゃ、ひねくれ者なので (^_^))。

*****************************

以降は、今月特に気に入った2作品です。

「庄内民話考」は半村良さんお得意の「ほら話」です。こういうのを読むと、まず「プロの作家はすげーな」と想いますね。庄内地方に伝わる(と作者が言っている)11の民話を並べて、冒頭で各民話を紹介する理由を、末尾で民話から窺い知れる庄内地方に起きた出来事を解説する、という構成です。各民話がそれっぽく出来ていて、それぞれの話がつながっているような無関係のような微妙なできばえ。いかにも本当に存在する民話を発掘して自分なりに並べてみました、といった心憎い構成です。また、冒頭および末尾の解説がくどくどせず、最低限必要なことを書いて全体をうまく引き締めています。うん、やっぱりプロはすげーや!

「五つの運命」も話上手のポール・アンダースンのいわば社会派SF。ストーリーを書いてしまうとネタばれになりそうで怖いので省略。主人公は社会学者で、精神病患者の増加にどのように対応すればよいかを研究している、とだけ書いておきましょう。

*****************************

それにしても、この雑誌が出版されたのは、1983年1月終わり頃だったはず。読み返してみると、各所で確かに読んだことがあるという思いが蘇るので、大学受験間際だったにも関わらず、隅から隅まで読んでいたと想われます。余裕かましてたはずはないので、ま、それだけ好きだったということでしょう。

近頃ではそこまで熱中できる小説は多くないけど、最近ではエリザベス・ムーンのヴァッタズ・ウォー・シリーズにはまっています。若き女船長カイラーラ・ヴァッタが宇宙狭しと冒険を繰り広げる、ニュー・スペース・オペラで、2年ほど前だったか早川SF文庫で第1作を読みました。

その時には、面白いと想ったのですが、シリーズものだと知らなかったんですね。そしたら今年になって第2作が出版されていて、これもまた面白い!おまけにいかにも「To Be Continued」という終わり方で後を惹くことこの上なし。第3作はどうなってるんだろと米国amazon で調べたら昨年だったかに出版済み。これの翻訳を待ってたら2〜3年後になるのかしらん、と想ったらもうだめ。読みたくて読みたくて我慢できない。仕方ないので、英語で読みました。

・・・そしたら数ヶ月前に早川SF文庫から出版されてました。(・0・)
ま、いち早く読めたし、想っていたほど難しくなかったし、これで英語で長編小説を読むのは3冊目なんですが、だんだん斜め読みのこつが分かってきて、最近はWEBで英語のエッチノベルを読んだりしてます。

ま、そんなことはどうでもいいのだけど、ヴァッタズ・ウォー・シリーズに話を戻すと、来年の2月に新作出版予定で、既に予約済みです。うーん、待ち遠しいねー。小説の出版を心待ちにするのは久しぶりです。そのうち、私の好きな作品ということで、紹介してみたいと想っていますので、気長にお待ち下さい。


全掲載内容
コンテンツ
作者
ページ
表紙イラストレーション 角田純男
表紙
広告 三和銀行の広告
 JCBカード
-
表紙内側
巻頭言(最近の出来事、今月号の紹介等) M・M 画:中島靖侃
1
1
目次 画:中島靖侃
2
3
(連載)サイエンス・ジャーナル
 アポロは終わったか?
加藤喬
4
5
現代宇宙詩シリーズ 7
 宇宙探検に捧げる言葉[ORATION FOR A SPACE SHOT]
ジョン・フェアファックス
 訳:矢野徹
6
10
(連載コラム第26回)SFコミックスの世界
 ザ・スピリット
KOSEI 画:水野良太郎
11
16
クロノプラスチック1008年 藤本泉 画:金森達
17
54
就職の条件[CONDITION OF EMPLOYMENT] クリフォード・D・シマック
 訳:小森正昭 画:楢喜八
55
64
特別掲載<SF論壇>ニューヨーカー誌より版権取得
 前進と上昇[SF ONWARD AND UPWARD WITH THE ARTS]前篇
ジェラルド・ジョナス
 訳:福島正実
65
76
広告 早川書房の日本SFノヴェルズ
 喪われた都市の記録(光瀬龍)
-
77
77
特別掲載<SF論壇>ニューヨーカー誌より版権取得
 前進と上昇[SF ONWARD AND UPWARD WITH THE ARTS]前篇
ジェラルド・ジョナス
 訳:福島正実
78
79
(連載第2回)日本SFこてん古典
 日本SF第一号とその周辺
横田順弥
80
90
早川書房SF刊行満15年記念企画
 SF三大コンテスト募集!(小説、漫画・劇画、アート)
 〆切:昭和48年4月30日
 <SF小説コンテスト>
  選考委員:小松左京、星新一、筒井康隆、石川喬司、
       福島正美、森優
  賞金:第一席(十万円)、第二席(五万円)、第三席(三万円)
 <SF漫画・劇画コンテスト>
  選考委員:手塚治虫、石森章太郎、小野耕世、森優
  賞金:第一席(五万円)、第二席(三万円)、第三席(二万円)
 <SFアートコンテスト>
  選考委員:真鍋博、武部本一郎、野田宏一郎、森優
  賞金:第一席(三万円)、第二席(二万円)、第三席(一万円)
-
91
93
(連載コラム第26回)SFコミックスの世界
 ザ・スピリット
KOSEI 画:水野良太郎
94
102
連作<街の博物誌>パート2
 ベゾアール・ゴート
河野典生 画:新井苑子
103
112
特別企画大河漫画 鳥人大系
 第十一章 ポロロ伝(その5)
手塚治虫
113
119
SFでてくたあ 福島正実、石川喬司
120
121
SF スキャナー
 ジョン・バースの千夜一夜
団精二
122
125
すぺーす・たいむ あんてな
 機体が伸び縮みするSST、宇宙ロケットの地上利用、
 宇宙技術の波及効果、土星へ、パイオニアの目的地変更、
 無公害の太陽発電システム
-
126
128
庄内民話考 半村良 画:畑農照雄
129
142
(SF映画・TV紹介)トータル・スコープ
 ソラリス、赤ちゃんよ永遠に、オズの魔法使い等
大伴昌司、井口健二
143
146
てれぽーと
-
147
149
特別企画大河漫画 鳥人大系
 第十一章 ポロロ伝(その5)
手塚治虫
150
158
連載劇画ノヴェル 新・幻魔大戦
 第四章 魔人・正雪(1)
石森章太郎、平井和正
159
174
五つの運命[THE FATAL FULFILLMENT] ポール・アンダーソン
 訳:深町真理子 画:岩淵慶造
175
192
広告 早川書房の出版本
-
193
200
五つの運命[THE FATAL FULFILLMENT] ポール・アンダーソン
 訳:深町真理子 画:岩淵慶造
201
202
広告 SFマガジン・CBSソニー共同企画 SF+ジャズ
 デマ(原作:筒井康隆、編曲:佐藤允彦)
-
203
203
五つの運命[THE FATAL FULFILLMENT] ポール・アンダーソン
 訳:深町真理子 画:岩淵慶造
204
226
広告 早川書房の日本SFノヴェルズ
 継ぐのは誰か?、牙の時代(小松左京)
-
227
227
五つの運命[THE FATAL FULFILLMENT] ポール・アンダーソン
 訳:深町真理子 画:岩淵慶造
228
232
広告 立風書房
 新しい文学的視野をひらく異色アンソロジー・シリーズ
  異形の白昼(筒井康隆編) 他
 現代の推理小説(全4巻)
-
裏表紙内側
広告 丸善
 日本PTA全国協議会推進 アテナ ノンシンナーボンド
 (大切な子供たちをシンナーの害から守りましょう)
-
裏表紙
凡例  :小説    :書評、SF関連の話題等    :投稿小説
   ■ :コミック  :SF周辺の話題(アート、音楽、映画等)
   ■ :投稿    :早川書房からのおしらせ等  ■ :広告