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***************************** 「就職の条件」は、火星への帰郷を熱望している地球暮らしの宇宙飛行士が、火星行き貨物船に採用されて故郷に帰るという、それだけの話です。冒険も謎解きもありません。地球で懐かしの火星を夢み、宇宙船で火星まで行き、そして火星では・・・と、最後の・・・の部分がおちになっているのですが、パンチが効いていないというか、アメリカンジョークじゃないけど何が面白いのか良く分かりません。 「ベゾアール・ゴート」は「街の博物誌」シリーズの第2話。先月号に掲載された第1話「メタセコイア」の紹介で「『植物』を小道具にした連作」と紹介しましたが、これは間違いですね。ごめんなさい <(_ _)> 「ベゾアール・ゴート」は「メタセコイア」と比べると、相当にストーリー性があります。主な登場人物は、自然食品の販売人と普通のサラリーマン。この販売人、梅雨の頃は貧相な中年男だったのですが、毎日ランニングしながら販売を続けるうちに肉体改善が進み、最後には奥様方や子供達に大人気の筋肉アイドルに変身します。一方、中年サラリーマンは販売人にも自然食品にも懐疑的。いきつけの飲み屋でいつも憤慨しているのですが、最後には・・・ 「クロノプラスチック1008年」は分類するなら社会派SFといったところでしょうか。社会主義国となった21世紀中頃の日本および源氏物語が執筆された当時の京都が舞台。 日本ソビエト政府は「源氏物語はソビエト日本が世界に誇る一大長編小説であり、紫式部が女性特有の鋭い社会批判をもって書き上げたものである」という見解を公式に発表しており、これに反する主張は許されません。主人公が小学生の頃、父親は著名な国文学者だったのですが「源氏物語の著者は紫式部ではなく男性である」という論文を発表したために、母親ともに「治療のため」精神病院に強制入院させられ、2人とも院内で死亡しました。 主人公は地方役人を職業としているのですが、密かに源氏物語と紫式部について研究を行い、さらに偶然にも源氏物語が執筆された時代へのタイムトラベルを許され、その結果、父親の論文が正しかったという確証を得ます。そしてアングラ雑誌にこの結論を発表し、これまた精神病院に強制入院させられます。 体制に反抗した若者が精神病院に入れられ「治療」を受けるという構図はアーシュラ・K・ル・グィンの「薔薇の日記」(SFM1983年2月号掲載)と同じですが、結末はずっとポジティブ。もっとも、どちらが好きかと聞かれれば、ル・グィンに軍配を上げますが(わたしゃ、ひねくれ者なので (^_^))。 ***************************** 以降は、今月特に気に入った2作品です。 「庄内民話考」は半村良さんお得意の「ほら話」です。こういうのを読むと、まず「プロの作家はすげーな」と想いますね。庄内地方に伝わる(と作者が言っている)11の民話を並べて、冒頭で各民話を紹介する理由を、末尾で民話から窺い知れる庄内地方に起きた出来事を解説する、という構成です。各民話がそれっぽく出来ていて、それぞれの話がつながっているような無関係のような微妙なできばえ。いかにも本当に存在する民話を発掘して自分なりに並べてみました、といった心憎い構成です。また、冒頭および末尾の解説がくどくどせず、最低限必要なことを書いて全体をうまく引き締めています。うん、やっぱりプロはすげーや! 「五つの運命」も話上手のポール・アンダースンのいわば社会派SF。ストーリーを書いてしまうとネタばれになりそうで怖いので省略。主人公は社会学者で、精神病患者の増加にどのように対応すればよいかを研究している、とだけ書いておきましょう。 ***************************** それにしても、この雑誌が出版されたのは、1983年1月終わり頃だったはず。読み返してみると、各所で確かに読んだことがあるという思いが蘇るので、大学受験間際だったにも関わらず、隅から隅まで読んでいたと想われます。余裕かましてたはずはないので、ま、それだけ好きだったということでしょう。 近頃ではそこまで熱中できる小説は多くないけど、最近ではエリザベス・ムーンのヴァッタズ・ウォー・シリーズにはまっています。若き女船長カイラーラ・ヴァッタが宇宙狭しと冒険を繰り広げる、ニュー・スペース・オペラで、2年ほど前だったか早川SF文庫で第1作を読みました。 その時には、面白いと想ったのですが、シリーズものだと知らなかったんですね。そしたら今年になって第2作が出版されていて、これもまた面白い!おまけにいかにも「To Be Continued」という終わり方で後を惹くことこの上なし。第3作はどうなってるんだろと米国amazon で調べたら昨年だったかに出版済み。これの翻訳を待ってたら2〜3年後になるのかしらん、と想ったらもうだめ。読みたくて読みたくて我慢できない。仕方ないので、英語で読みました。 ・・・そしたら数ヶ月前に早川SF文庫から出版されてました。(・0・) ま、そんなことはどうでもいいのだけど、ヴァッタズ・ウォー・シリーズに話を戻すと、来年の2月に新作出版予定で、既に予約済みです。うーん、待ち遠しいねー。小説の出版を心待ちにするのは久しぶりです。そのうち、私の好きな作品ということで、紹介してみたいと想っていますので、気長にお待ち下さい。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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