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大雑把に分類すると、非日常的なストーリーを楽しむエンタテインメント作品が6つ。身の回りで起きるできごとをSFっぽく味付けした作品が4つ。実験小説風の作品が4つ。といったところでしょうか。 ***************************** まず、いかにもSFらしいエンタテインメント作品をご紹介。 まず、遙かなる真昼とエラスティック惑星の2作品の舞台は宇宙。 「遙かなる真昼」は、司政官シリーズの初期の作品です。司政官制度が完成しつつある時代、開発途上惑星に派遣された司政官が天才原住民の社会改革を支援しようとして、違法な植民者達と対立するお話です。 「エラスティック惑星」は惑星開発コンサルタント社のヒノ、シオダコンビを主人公とする惑星探査シリーズ。ユーモア謎解き小説です。本作品では、惑星を周回する不思議な環状模様の謎に挑みます。 「勝軍明王まいる」はタイムパトロールもの。江戸時代の農村に身を隠した時間犯罪者を計略にはめていぶりだすお話です。パトロール員の一人は、現代の一杯飲み屋の女将に身をやつしていますが、地回りに支払うみかじめ料が1日150円。これって安いのか高いのか正確には分かりませんが、毎晩、組の若い衆が空き缶持って150円の集金に寄るという構図が、何となく時代を感じさせます。確かに昭和48年当時には150円で昼飯ぐらい食えたような気がするな〜。 「噫々レムリア」は白亜シリーズの最後頃の作品。海没したアトランチスから時空飛行船に乗って白亜紀に逃れたイザナミス皇女とナギのお話。これだけ書けば日本誕生秘話とでもいうべき物語であることは分かりますよね? 「”女狼”リツコ」は作者お得意のバイオレス・アクションSF。ウルフガイ・シリーズの番外作品です。何も考えずにストーリー展開を楽しむ種類の小説。血湧き肉躍る展開です。スケ番は多数登場するし、また、彼女たちの名前が「リツコ」だったり「デメキンおよし」だの「トンカチ由美」だったり、いかにも昭和時代ですね。今となっては名前だけ聞くとユーモア小説と間違えそうです。 なお、今月号の掲載作品でエッチシーンが書かれているのは「”女狼”リツコ」だけです(正確には強姦シーンだが)。他作品はとっても清いです。裸のかけらもありません。キスもありません。手も握りません。(笑)これも時代ですね。 「能力」はタイトルからも分かるように超能力ものです。ただし、普通の超能力ものというか冒険ものではありません。砂漠の中で理由も分からず歩いている男が、水も食料も切らし瀕死状態になったところで超能力に目覚めます。男は、おでんの串を持ったチビ太(と言っても若い人にはわかんねーだろーなー)やスポーツカーを出現させ、最後にはゴジラを生み出します。この小説はいったい何なのか、私には謎です。ユーモア超能力SFなのかなー(それにしてはさほど面白くない)。 ***************************** 次に、身の回りの出来事をSFっぽく味付けた4作品を紹介。 「まわれ右」は星新一さんお得意のショートショート。時間を逆行する(目が覚めると(眠りについた日の)前日になっている)男と医者のお話です。アイデアは面白いのですが、おちのインパクトがさほどなく、個人的には消化不良の感じです。 「失われた結末」は、小説家が偶然に見つけた放置タイムマシンで、第二次世界大戦中の自分の家にタイムスリップする話。タイムパラドックスの要素を含んでいます。この当時には話の構成に魅力を感じたような気もしますが、今読んでみると特に目新しいものを感じません。 「自殺クラブ」も、今となっては「うん、そんなクラブもあるかもしれないね」と納得できそうな気もします。今ではこれはSFでは全くなくて、現代小説にすぎないのか?そんな気もします。などと、感想を先に書いてしまいましたが、自殺クラブとうのは、誰かが自殺しようとしているという情報をいち早く収集し、自殺現場にカメラなどを仕込んでおいて生の自殺シーンを鑑賞するという集まりです。ね、実在しても不思議なさそうでしょ?おまけに近未来という設定ですが、誰一人携帯電話を持っていないというだけで、嘘くさく感じてしまいます。やはりこういう日常的なテーマでSFを成立させるのは難しいのでしょうか? 「両面宿儺」はSF小説というスタイルで著者の思想を訴えようとしているように思えます。その思想とは、大雑把に書けば、日本文化が米国文化を無秩序に受け入れた結果その本質を失いつつある、日本人は日本文化を取り戻さなければいけない、といったもののように思われます。私としてはどうもこの手の説は苦手です。日本文化、東アジア農耕文化、コーカソイド文化と並べて、日本文化は東アジア農耕文化の1つでコーカソイド文化とは根本的に相容れない、と断ずるあたりに疑問を感じます。そもそも文化についての近いとか遠いといった尺度を、具体的な対比対象を定めずに議論できるように思えません。ま、人がどう考えるかはその人の勝手ですが・・・ ***************************** 最後に、実験小説風というか、ストーリーを紹介しても意味がない、逆に言えば、いいにせよ悪いにせよ読まなきゃ分からない4作品を紹介。 「モンテカルロ法」はヨーロッパのカジノで起きた奇妙な出来事を綴ったお話。夢の古本屋シリーズの1作品です。 「メタセコイア」は「詩小説」とでもいえばいいのでしょうか?植物を小道具にした連作の始まりです。第一章は、都心の歩行者天国で、他の人の目には見えないメタセコイアの苗を観察する親子の物語。特にほのぼのとした内容でもなく、ドラマがあるわけでもない。人には見えないものを鑑賞し感慨にふけり冗談を言い合う家族の姿がただたんたんと描かれています。 「デマ」はデマがどのように広がっていくかを小説仕立てで解説したお話。フローチャート風にかかれている実験小説です。内容はたいしたことありません。単に事実を箇条書きにしたという印象で、筒井康隆さんらしい言葉の迫力が感じられません。SF+ジャズという”うたい”でレコードも発売されたもよう。この作品の前に1ページ広告が掲載されています。 「メシメリ街道」は、一言で言えば不条理小説です。どこまで行っても決して横断することのできない街道、常に中天にかかっている太陽、時が止まっているのではなく、街道沿いの街並みは時々刻々と変貌して行きます。最初は街道の向こう側で待っている恋人に会うのが目的だったのですが、恋人の家が消え失せても道を渡るという目的だけは残り、主人公はなんとしてでも道を渡ろうと試み続けます。ワタシこういうのは大好きです。今月号での(ワタシの)一押し作品ですね。 ***************************** 以上の他に、半村良さんのエッセイ(なのだろーか?)「私のネタ本、秘蔵本」もお勧めです。WEBで探すと、何かの作品集に掲載されているようなので、一読をお勧めします。 半村良さんが作品を生み出すネタとなった本を紹介したもので、例えば産霊山秘録は「都市の必然性」(著:ルイジ・ビオッティ)を元ネタの一つとしているそうです。「都市の必然性」では「人間の集落は、地形のあり方によって必然的に位置が定まる」という中国の占いのような説が紹介されているとのこと。つまり「キ」あるいは「ケ」が存在する土地があり、そういった場所には必然的に大きな都市が作られるとか。ちなみに「キ」「ケ」は東洋の神秘的な言葉である「気」を出典としています。ルイジ・ビオッティは、「キ」理論を唱えるだけでなく、フランスのレーザンヌ地方、特にサン・レーザンヌ教会付近の「キ」を実測したそうで、「産霊山(さんれいざん)」は「サン・レーザンヌ」をもじってつけたのだそうです(作者自身がそのように書いています)。 「私のネタ本、秘蔵本」はこういった面白い裏話が多数書かれており、半村ファン必読書といえるでしょう。特にエッセイ(?)結びの数文は感動ものです。「さすが半村良」と膝をたたきます。 最後に、先月号に掲載されていた「アクナル・バサックの宝」の作者は半村良さんです。執筆当時は「自分が普段書く話とジャンルが違う」ということで別のペンネームにされたようですが、この年の8月号には、半村良の名前で「亜空間要塞」なんていうハチャメチャSFを掲載されています。なので「アクナル・バサックの宝」だけ別名義にする必要もなかったと思うのですが・・・ | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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