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************************************** それでは、まず特集作品からご紹介。 「ゆるやかな彫刻」は、一言で書けば、男女の出会いのお話。で、もう少しまともに紹介しようとしても、これ以上の説明ができません。あらすじは(オチのある作品ではないので粗筋書いても問題ないと思うのだが)、癌を患っている中年女性が天才発明家と出会い、電磁力によって治療してもらい、二人の間に恋が芽生えるというもの。 この説明じゃ、この作品のどこがいいのかさっぱり分かりませんよね?正直なところ、スタージョンは食わず嫌いだし、この作品も良く分かりません。ただ、いろいろなことに疲れ切った男女がなんとなく惹かれていく(といっても、絶対にラブコメではない)あたりのゆったりとした雰囲気は宜しいかと思います。ま、両賞受賞作品だから入手は容易なはず。気になる方はご自分で読んでみて下さい。 ゆったりとした雰囲気といえば、シマックの「岩の中にいるもの」も、似たような雰囲気を持った作品です。もう少し短く纏めれば、「ゆるやかな彫刻」よりむしろこちらの方が中篇部門を受賞したかもしれない。そんな気がします。不慮の事故で妻子を失い、田舎の荒れ果てた農場に引きこもった男が主人公。事故の影響か、彼には時を遡った風景が見え、星の声が聞こえるという特殊能力が目覚め、悠久の過去から岩に閉じこめられている孤独な「存在」に気付きます。そして、その「存在」の孤独と、自分自身の孤独感を重ね合わせ、何とかして「存在」を助け出したいと願います。 もう一つの特集作品は、ラファティの「完全無欠な貴橄欖石」。ハチャメチャというべきか、形而上学的というべきか・・・完全無欠な世界の5人の住人が思念によって「伝説の」アフリカ大陸を現出させるという、要するにラファティらしいお話です。個人的には3作品の中で一番のお気に入りです。 ************************************** 「明日より永遠に」は先月号でご紹介した通りの近未来アクションSF。記憶を失ったまま冷凍睡眠から目覚めた男が、失われた記憶を追い求めるお話。主人公は追跡行の末、長寿技術の独占によって実質的に世界を支配している男と対峙します。途中で、この敵の正体が推測できてしまうことと、追跡行が少し長すぎてだれてしまうのが難点ですが、それなりに楽しめるストーリーSFです。逆にもっと話をふくらませて長篇にしたほうが良かったのかもしれません。 もう一つの海外作品は「ポルノ騒動」。銀河文明への将来の加入候補として地球を秘密裏に監視している、異星人の監視部隊が遭遇した解決困難な事件の記録です。はっきりとしたオチのあるお話なので、粗筋を書くのはやめにしますが、コミカルで軽く楽しめる作品。アイザック・アシモフの作品だと言われても信じてしまいそうな読後感です。 ************************************** 「産霊山秘録」は時代が幕末に進み、今月の主人公は坂本龍馬とその幼なじみ。例によって地名や史実が「ヒ」と結びつけられますが、なんだか強引にこじつけているような感じがして、作品世界に素直に没頭することが出来ませんでした。最初は「神の末裔」だったはずの「ヒ」一族が次第に呪われた暗黒集団に変貌していくような感じがします。作者はもともとそういう予定だったのか、それとも書き進めていくうちにそうなったのか、興味があるところです。 ************************************** さて、「ヤング」談議から始めた今月の雑文ですが、期せずして「坂本龍馬」というヤングを主人公にした作品で締めくくることになりました。 そういえば、10月号が発行された1972年8月には、私も18才。半年後には大学受験を控えたヤングでありました。「ヤング」と言う言葉を聞くと「あのころに戻れたら」、そんな思いに駆られる秋の夕暮れです。 |
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