1972年7月号(161号)

ハヤカワSFマガジン161号表紙
(C) 早川書房
<人気カウンター>
(各号の掲載作品について、読者が1〜5点の範囲でハガキ投票を行い、平均点が高い作品を掲示していました。4点を超える作品は滅多にありませんでした。今回は1972年4月号の結果発表です。)
順位 題名 作者 得点
1 石機械 荒巻義雄 3.89
2 神変ヒ一族 半村良 3.54
3 聞いていますか? ハーラン・エリスン 3.22
4 サンタクロース対
スパイダー
ハーラン・エリスン 3.12
5 ダニエル教授の実験 マレイ・ラインスター 3.04
1972年4月号掲載作品の「人気カウンター」を見て、ちょっとびっくり。ハーラン・エリスン作品の評価が意外に低い!「世界の中心で愛を叫んだけもの」がランク外!!

何でだろー。この時代の日本にはバイオレンスSFは合わなかったのだろうか?不思議です。

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先月に引き続きロバート・F・ヤングの作品、それも中篇「妖精の棲む木」が掲載されています。

さまざまな惑星で木樵業を請け負う専門チームが、入植者の依頼に応じて、200m以上の高さにそびえ立つ巨木を切り落とすお話。タイトルの妖精が棲んでいるのは、もちろんこの巨木です。

この設定で作者がロバート・F・ヤングと来れば、妖精と木樵青年との切ないロマンス談か、と思うところですが、この作品はそうではない(淡いロマンスの香りも、あるにはあるが・・・)。シニカルな結末がちょっと「らしくない」ような、それでも面白い作品です。

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私が今月号で一番気に入ったのは、荒巻さんの「トロピカル」です。「妖精の棲む木」は惜しくも2位ってとこですね。

このお話は先月号の「エロータス」と違って、言わば、がちがちのサイコSF(「サイコSF」の定義を聞かれても答えられないのだが・・・)。

時間改変者を捕まえるために未来からやってきた時間局員が主人公。こう書くとタイムパトロール物かと思うでしょうが、アクションなどかけらもなく、よくよく考えてみると「時間改変者を捕まえるために未来からやってきた時間局員」という設定自体が何のためなのか、良く分かりません。

多分「ドラキュラ」伯爵の存在を合理的に説明するための設定なのでしょうが、小説の舞台が主人公の深層意識によって変貌する世界なのだから、そんなもの合理的に説明しても無意味だと思う(そもそも合理的に説明されていないし)。

なんだかんだ、けちをつけるようなことを書きましたが、要するにこの作品は、合理的な展開とか、因果関係とかどうでも良くて、主人公のトラウマに反応して、徐々にいびつに変化していく世界の様相を楽しめば良いのではないかと思います。

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産霊山秘録 第4話は「神州・畸人境」。時代は江戸時代の初め。第3話で芯の山への飛行を試みて失敗した猿飛の息子「佐助」が主人公。佐助は、まだ子供の頃に父を失い、付近に棲むヒ一族の末裔からヒの術を教わるのですが、自身が属しているヒ一族の知識も殆ど学ぶことなく成長します。

佐助はなぜか江戸幕府に命を狙われ、信州から九州まで逃避行を続けるのですが、旅の間に「オシラサマ」という新たなキャラクターと出会います。実は「オシラサマ」はヒ一族の女性集団で、ヒ一族に産まれた女性は、日の光はおろか衣服に対してもアレルギーがあり、化け物のような白い裸体のまま、洞窟の奥深く生きていく運命とのこと。

第1話では神の末裔だったはずのヒ一族がだんだん変質していくような。結局、半村さんはどんな存在にも穢れを浴びせずにいられないんですね、きっと・・・ま、面白いからいいんですけど。

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「ラン・チチ・チチ・タン」は、いかれた(ということはスーパーな)芸術家や科学者の5人の仲間が、世界を支配するリズムを発見し世の中に広めてしまうお話。ひとたび耳にすると頭から離れなくなり、ひたすら奏で続けるという恐ろしいリズムです。実はこのリズム、仲間の一人の御先祖(極悪な呪術師)が時空を超えて子孫に送ったメッセージでした。

5人は、異次元かどこかにいるはずの呪術師とコンタクトして魔力を中和するリズムを手に入れようとします。一言で言えばドタバタジョークSFです。それなりに面白いといったところか。

残りの2作品はショートショート。どちらも感激するほどのオチはありません。「救出者」は一種のマッドサイエンティストもの。ホントはちょっと違うけど、ジャンルを書くとそれだけでネタバレになりそうなのでここまで。良くある筋立てです。

「ステッキで殺した」はちょっぴり恐怖談風のお話。ネコの復讐話です。

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「空想不死術入門」に国連の世界人口予測(1963年)が載っています。それによると、2000年の予測人口は、最大:66.94億人、最少:54.49億人、中間値:61.30億人。実際には60.71億人ですから、かなり正確な予測だと思います。ちなみに1975年、80年、85年、90年、95年についても予測中間値の誤差は1〜2%でした。(直近数年の変化率をそのまま未来に敷衍したとしか思えない)普段目にする怪しげな経済予測と比較して、その精度の高さに脱帽。予測はこうでなくちゃ。

最後に、福島さんの論文「SFはポルノに乗るのか」について一言。これを読むと、1972年頃の社会状況が思い出されて懐かしいのですが、福島さんが「性」についてSF作家がどのように取り組むべきか、大まじめに議論しているのが何やらおかしくもあり、懐かしくもあります。そう、この時代は、「性」についてどういう立場を取るにしても、マジメに議論すべき物だったのですね・・・今のような軽い時代になったのはいつ頃からだったのか?時代は変わった。ホントにそう思います。


全掲載内容
コンテンツ
作者
ページ
表紙イラストレーション 斉藤和明
表紙
広告 三和銀行の広告
 JCBカード
-
表紙内側
巻頭言(最近の出来事、今月号の紹介等) M・M 画:中島靖侃
1
1
目次 画:中島靖侃
2
3
(連載)サイエンス・ジャーナル
 しめくくりにきた宇宙開発
加藤喬
4
5
新連載科学コラム 空想不死術入門
 第12章 狭すぎる地球
渡辺晋 画:岩渕慶造
6
10
(連載コラム第19回)SFコミックスの世界
 フリーク・ショウ 地球はゲテモノでいっぱいだ
KOSEI 画:水野良太郎
11
16
<産霊山秘録>第四話
 神州畸人境
半村良 画:武部本一郎
17
49
SF論壇<メリル来日記念特別寄稿>
 サイエンス・フィクション? その意味を問う(下)
ジュディス・メリル
 抄訳:浅倉久志
50
63
放出者
[THE RESCURE]
アーサー・ポ−ジス
 訳:風見潤 画:中島靖侃
64
70
(SF映画・TV紹介)トータル・スコープ
 二重スパイ・国際謀略作戦(原題直訳「ハウザーの記憶」)、
 失われた地平線、ピーターパン、星の王子様 他
大伴昌司、井口健二
71
74
新連載科学コラム 空想不死術入門
 第12章 狭すぎる地球
渡辺晋 画:岩渕慶造
75
78
トロピカル 荒巻義雄 画:岩渕慶造
79
112
特別企画大河漫画 鳥人大系
 第九章 うずらが丘(その4)
手塚治虫
113
119
SFでてくたあ 福島正実、石川喬司
120
121
SF スキャナー
 女に憑かれた道
団精二
122
125
すぺーす・たいむ あんてな
 宇宙に発電所、再び金星に挑む、月に国際基地が、
 火星と月は兄弟?
-
126
128
ラン・チチ・チチ・タン フリッツ・ライバー
 訳:山田和子 画:霜月象一
129
141
エッセイ特別寄稿
 SFはポルノに乗るのか
福島正実
142
150
ステッキで殺した
[HE KILL IT WHAT STICK]
ウィリアム・F・ノーラン
 訳:風見潤 画:楢喜八
151
156
連載劇画ノヴェル 新・幻魔大戦
 第二章 ミュータントお時(6)
石森章太郎、平井和正
157
172
てれぽーと
-
173
175
(連載コラム第19回)SFコミックスの世界
 フリーク・ショウ 地球はゲテモノでいっぱいだ
KOSEI 画:水野良太郎
176
182
妖精の棲む木
[TO FELL A TREE]
ロバート・F・ヤング
 訳:深町真理子 画:金森達
183
192
広告 早川書房の出版本
-
193
200
妖精の棲む木
[TO FELL A TREE]
ロバート・F・ヤング
 訳:深町真理子 画:金森達
201
220
広告 72年度全国縦断 ハヤカワ・ブック・フェア
 参加決定全国10書店 47年4月下旬より5月末日まで
-
221
221
妖精の棲む木
[TO FELL A TREE]
ロバート・F・ヤング
 訳:深町真理子 画:金森達
222
226
広告 NOWなフィーリングでせまる 海外コミック専門誌
 「WOO(ウー)」 5月25日 創刊号発売
-
227
227
妖精の棲む木
[TO FELL A TREE]
ロバート・F・ヤング
 訳:深町真理子 画:金森達
228
232
広告 立風書房
 新しい文学的視野をひらく異色アンソロジー・シリーズ
  異形の白昼(筒井康隆編) 他
 現代の推理小説(全4巻)
-
裏表紙内側
広告 丸善
 日本PTA全国協議会推進 アテナ ノンシンナーボンド
 (大切な子供たちをシンナーの害から守りましょう)
-
裏表紙
凡例  :小説    :書評、SF関連の話題等    :投稿小説
   ■ :コミック  :SF周辺の話題(アート、音楽、映画等)
   ■ :投稿    :早川書房からのおしらせ等
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