1972年3月号(157号)

ハヤカワSFマガジン157号表紙
(C) 早川書房
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(各号の掲載作品について、読者が1〜5点の範囲でハガキ投票を行い、平均点が高い作品を掲示していました。4点を超える作品は滅多にありませんでした。今回は1971年12月号の結果発表です。)
順位 題名 作者 得点
1 宇宙航路 光瀬龍 3.95
2 消滅した月 リイ・ブラッケット 3.52
3 シイベリイ・クイン 3.51
4 ハピバースディ,
イエスさま
フレデリック・ポール 3.09
今月号の掲載小説は短篇:1、中篇:3で合計4本のみ。海外作品は「帰れ、ニュー・オーリンズへ」(短篇)と「影の船」の2本ですが、まずまずといった読後感でした。

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「帰れ、ニュー・オーリンズへ」は初老の金持ちが妻にも内緒で資産をはたき、小惑星を改造して懐かしのニュー・オーリンズを再現するお話。

といってもニュー・オーリンズを再建するまでの苦労話ではなく、大半はニュー・オーリンズ(実際には小惑星)に移住した後、懐かしい街並みや伝説のジャズ・プレイヤーとの出会いを楽しむといった非常にノスタルジックな作品です。

正直、私にはピンと来ませんでした。ひょっとしたらジャズ好きの人なら「おーこの時代はそうだった」とか共感できるのかも。

「影の船」はフリッツ・ライバーらしい奔放な文体で導入部の辺り読みづらいことこの上なしです。個人的にはどうもライバーの作品というより文体は好きになれない。

いきなり説明もなく造語が使われる辺りはコードウェイナー・スミスと同じですが、スミスの場合にはかえって興味が惹かれるのに対して、ライバーの場合には取っつきにくくて放り出したくなる。ライバーの文体が軽いせいでしょうか?

さて、「影の船」はとにかく船らしい空間の中にしつらえられた「酒場(?)」の従業員が主人公。彼は酒場にいる以前の記憶を失っており、歯もなく視力も衰えています。

物語の前半は主人公を取り巻く人間関係、船の中を彷徨く「吸血鬼」や「魔女」、「酒場」でドラッグに溺れる人々などが比較的淡々と語られますが、後半で一気に主人公の正体、船の秘密などが明らかになります。

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日本人作家の作品は「魔女の標的」と「ひきさかれた街」の2本。どちらも質量共に読み応えのある作品でした。

「魔女の標的」は、平井さんらしいバイオレンス超自然小説。お話は主人公が通う高校に、美貌の女教師が赴任してきたところから始まります。誰もがその美しさを驚嘆する中、主人公だけは何か禍々しいものを感じ取ります。そして不可解な事件が次々に発生し・・・

テンポ良く話が進み、小気味よく引き込まれていくのですが、ハッピーエンドでないのが不満。さらにいえば、ホントにこれで終わりなの?というちょっと尻切れトンボのような感があります(もっとも平井作品で完結した作品を読んだ記憶はないけど・・・)。

面白さでは今月号の掲載作品中NO1だと思いますが、そういう不満も残る作品です。

「ひきさかれた街」は近未来の東京を舞台にした通常小説です。国内の対立に乗じてソ連とアメリカが侵攻し、日本はソ連支配下にある北東部と、アメリカ配下の西南部に分断されています。東京のお茶の水付近では神田川を国境にして、北側のソ連地区、南側のアメリカ地区に分かれています。

主人公は4才の時、両親が品川付近に働きに出ていた時に日本が分断され、そのために祖父と2人きりでソ連地区に取り残され、やがて祖父も死亡したために孤児になります。本郷辺りの孤児院で育てられ「現在」20才。その主人公が15才の時に決行した2日間の国境越えについて、記憶をたぐりながら書き記したという体裁の作品です。

15才の頃の行動や、その時考えていたことなどが、鋭い批判を交えながら客観的に語られます。冒頭に書いたように、これはSFではなく通常小説です。例えば舞台を東西ベルリンに変えても全く同じ作品が成立します。だからこれは通常小説です。

読み応えという点では、この作品が今月号NO1でしょう。

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そんなところで、今月号の紹介はオシマイ!

実は、この当時の世相とか、当時思っていたこととか書こうとしたのだけれど、8行ほど書いたところであまりにも嘘くさいのんで消しました。自然体で書けるときに書くことにします。それでは!


全掲載内容
コンテンツ
作者
ページ
表紙イラストレーション 斉藤和明
表紙
広告 三和銀行の広告
 JCBカード
-
表紙内側
巻頭言(最近の出来事、今月号の紹介等) M・M 画:中島靖侃
1
1
目次 画:中島靖侃
2
3
(連載)サイエンス・ジャーナル
 論争の時むかえる火星
加藤喬
4
5
いらすと・ぽえむ
 コズモファンタジア
斎藤和明
6
12
(連載コラム第15回)SFコミックスの世界
 アラン・レネに招かれた男
KOSEI 画:水野良太郎
13
16
魔女の標的 平井和正 画:岩渕慶造
17
47
帰れニュー・オーリンズへ
[DIDN'T HE RAMBLE]
チャド・オリヴァー
 訳:深町真理子 画:楢喜八
48
58
ひきさかれた街 藤本泉 画:金森達
59
95
広告 日本SFノヴェルズ次回刊行
 牙の時代(小松左京) 装幀:角田純男
-
93
93
ひきさかれた街 藤本泉 画:金森達
94
95
いらすと・ぽえむ
 コズモファンタジア
斎藤和明
96
105
(連載ビブリオコラム)エンサイクロペディア・ファンタスティカ
 宇宙製造者たち(8)
伊藤典夫
106
112
特別企画大河漫画 鳥人大系
 第八章 ドゥブルゥドの査定委員会への要請
手塚治虫
113
119
SFでてくたあ 福島正実、石川喬司
120
121
SF スキャナー
 SFをぶっこわそう(その二:ニュー・アンソロジー)
岡田英明
122
125
すぺーす・たいむ あんてな
 火星からの報告、ソナー命令システム、超協力の磁力場、
 管制から医学まで衛星は大いそがし、お次はバイキング計画
-
126
128
新連載科学コラム 空想不死術入門
 第10章 ミュータントの背景
渡辺晋 画:岩渕慶造
129
137
(連載コラム第15回)SFコミックスの世界
 アラン・レネに招かれた男
KOSEI 画:水野良太郎
138
148
連載劇画ノヴェル 新・幻魔大戦
 第二章 ミュータントお時(2)
石森章太郎、平井和正
149
172
てれぽーと
-
173
175
(SF映画・TV紹介)トータル・スコープ
 時計じかけのオレンジ、宇宙戦争、恐怖のハエ男 他
大伴昌司、井口健二
176
179
影の船
[SHIP OF SHADOW'S]
フリッツ・ライバー
 訳:浅倉久志 画:新井苑子
180
192
広告 早川書房の出版本
-
193
200
影の船
[SHIP OF SHADOW'S]
フリッツ・ライバー
 訳:浅倉久志 画:新井苑子
201
228
広告 日本SFノヴェルズ近刊予告
 喪われた都市の記録(光瀬龍) 装幀:角田純男
-
229
229
影の船
[SHIP OF SHADOW'S]
フリッツ・ライバー
 訳:浅倉久志 画:新井苑子
230
232
広告 立風書房
 異形の白昼(編:筒井康隆)、
 12のアップルパイ(編:筒井康隆)、
 現代の推理小説(全4巻) 他
-
裏表紙内側
広告 丸善
 日本PTA全国協議会推進 アテナ ノンシンナーボンド
 (大切な子供たちをシンナーの害から守りましょう)
-
裏表紙
凡例  :小説    :書評、SF関連の話題等    :投稿小説
   ■ :コミック  :SF周辺の話題(アート、音楽、映画等)
   ■ :投稿    :早川書房からのおしらせ等
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