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ハヤカワSFマガジン145号表紙
(C) 早川書房 | |
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<人気カウンター> | |
| (各号の掲載作品について、読者が1〜5点の範囲でハガキ投票を行い、平均点が高い作品を掲示していました。4点を超える作品は滅多にありませんでした。今回は1971年1月号の結果発表です。) | |
| 順位 |
題名 |
作者 |
得点 |
| 1 |
火の国のヤマトタケル |
豊田有恒 |
3.75 |
| 2 |
脱走と追跡のサンバ |
筒井康隆 |
3.55 |
| 3 |
アラリー |
ロバート・
シルヴァーバーグ |
3.42 |
| 4 |
ロックでいこう |
山野浩一 |
3.26 |
| 5 |
恐竜狩り |
L・スプレイグ・
ディ・キャンプ |
3.24 |
| 6 |
ミニミニ
ショートショート5 |
戸倉正三 |
3.09 |
| 7 |
禁猟区 |
ログ・フィリップス |
3.06 |
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今月号は小説がやや低調。
「宇宙の海をこえて」という特集で、5作品が掲載されていますが、これはいい!と膝を打つようなものがありません。
その中で、ちょっといいと思った作品は、古の火星の宝「青い瓶」を探し求める男たちの物語。題名もそのまま「青い瓶」です。秀作とは言えないまでもブラッドベリの香りが感じられる一作。
次は、老夫婦が未開惑星の原住民との心の交流をめざす話「礼拝の夜」が少しだけ気に入りました。「未開人の巣」は、心満たされない女性が金星のジャングルで夫と出会う話、「知られざる国」は冥王星の氷の美女をさらった探検隊のお話。どちらも読みやすい話ではありますが、今からみると荒唐無稽すぎて、ちょっとしらけてしまいのが難点。「エレジー」は地球が最終戦争で滅びた後、不思議な公園惑星にたどり着いた男たちの物語です。
今月号はむしろ日本作家たちの作品が光っていました。
「脱走と追跡のサンバ」がいよいよ佳境にさしかかってきました。前回、天文学的時間の不正確さを知った主人公は、原子時計について学ぶために、捕縛大学の応用物理学教室に向かいます。そして、どこにも「正確な(主観的時間と完全に一致する)」計時方法などないことを知り、脱出のカギは、巨大なタイムマシンとも言える、自我町6丁目の井戸時計店にあるという結論に至ります。
粗筋など面白さとは無関係な作品です。客観的時間について哲学的解説を行うタクシー運転手、腕のない男、耳のちぎれた女など、5体不満足な人たちが徘徊する応用物理学教室(なんと「かたわ」という現代では死に絶えた言葉も登場)の不気味さ、そこで餅つきする研究者たち、餅を吸収して発狂する原子時計など、非日常のおどろ美しい光景が繰り広げられます。
「組曲・北珊瑚礁」は密かに人類を監視している「星雲監視者」たちが日本人を使った実験を行う話。星雲監視者たちが登場するのは物語のプロローグとエピローグのみで、それがなかったら、SFの欠片もない現代小説です。日常生活に退屈し、危険を求める5人の男が政界の黒幕に雇われてラオスの麻薬地帯に潜入しますが、本当の「危険」を味わうにつれ、馬脚を現して行きます。「日本人は安全なところでスリルを求めるどうしようもない民族になった」という哀れみの一作です。今月のNO2かも。
私にとっての今月最大の収穫は、「ある晴れた日のウィーンは森の中にたたずむ」です。近未来、日本を脱出しヨーロッパのカジノを彷徨する27歳の青年が主人公。彼は、ベートーベンが画家として知られる異なる世界のウィーンに迷い込みます。そして、そこで美しい娼婦ソフィーに出会い愛し合い、彼女を囚われの身から救い出そうとします。
最終的に、娼婦たちを支配する暗黒街の黒幕との交渉に成功し、金さえ払えば解放するという約束ができます。彼はカジノで必要な金を稼ごうとし、最後に成功するのですが、肝心のあのウィーンに戻ることができなくなります。この世界のウィーンでソフィーを抱き、一層の喪失感を味わい、ウィーンを離れます。夢の中を漂っているような情感にあふれた作品です。
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それにしても、今月号といい、先々月の日本人特集といい、主人公たちは日常生活に閉塞感を感じ「俺が生きる場所はここではない」という漠然とした不満を感じています。その閉塞感こそが、学生運動などのエネルギーにもなっていたのではないでしょうか?
今は違いますよね。そういう閉塞感が社会から払底されたのではなく、諦めが心底まで沈み込んで「今が楽しければどうでもいい」という風潮が強くなっているのではないかと思います。共和制ローマに例えれば、末期あたりまで来ているような気がする。もうすぐ内乱の時代に入るかも。
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「SFでてくたあ」では、70年度の日本SFベスト5筆頭に「家畜人ヤプー」が輝いています。日本人はニホンザルから進化した動物であり人類の仲間ではないとする学説が広く支持されるようになった未来が舞台。人類ではないので「ヤプー」という家畜として飼われています。それもペットではなく、生体改造により性玩具や汚物処理機に改造される汚い家畜です。現代の日本人青年とドイツ人女性(だったと思う)の恋人がふとしたことで、この未来に連れ出され、それぞれ家畜、人間としてさまざまな未来の出来事を経験します。
読めば必ず気分が悪くなる、これでもかと全力で日本と日本人を嘲った怪作です。この作品で、未来では女性の社会的地位が向上しているという件、偶然だとは思いますがなかなか慧眼かと思います。この未来の世界では成人した男は花婿修行にはげみ、立派な女性から求婚される日を夢見ています。
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巻末広告は、全日空。「郷里へ。土曜の朝でて日曜の夜帰ってきました」というフレーズ。今でこそ、遠隔地の日帰り出張もあたりまえですが、まだJR(当時は国鉄)での旅が主流だった時代。普通の人にとって海外旅行など夢でしかなかった。私も年に一度ほど父が松江から東京まで、寝台列車で出張していたことを思い出します。当時は地方から東京まででかけるというのが大旅行でした。
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